第5章 かれしかのじょ
ふわふわふわふわと、なんだか夢の中を歩いているみたい。頬も身体もものすごく熱い。
宗介さんの力強い腕とか、優しい声とか鼓動とか・・・私のより少し固めの唇の感触とか。全部全部はっきり覚えてるのに、なんだか信じられない。たった数時間前の出来事なのに・・・・・・
「ヒカリちゃん?どうかした?」
「あ!い、いえいえ!なんでもないです!!」
・・・いけないいけない。ボーッとしてたら江先輩に心配されてしまった。
地方大会当日。宗介さんとおわかれして、一旦ホテルに帰った私達は荷物をまとめて帰路についている。今は駅で電車が来るのを待っているところだ。
だけど、宗介さんのことで頭がいっぱいな私はふらふらふわふわしっぱなしで、さっきから何回も先輩方に心配されてしまっている。電柱にぶつかりそうになったり、段差に気付かないで転びそうになったり・・・
・・・うん、少し気を引き締めないと。
「ヒカリちゃーん!!はい、これあげる!あーん!!」
「へ?あーん・・・んぐっ!!」
突然目の前に現れた渚先輩。びっくりして言われるがままに口を開けてしまうと、何かが口の中にぐっと突っ込まれた。
「ポテチのいちごパフェ味!!そこの売店で買ったんだ!美味しくない?」
「んぐ・・・・・・あ、美味しいです!」
「でしょー?!」
いきなりで驚いたけれど、ポテチとしての味はしっかり残したまま、いちごの甘酸っぱい感じと生クリームの濃厚な甘さがなんだかとってもいい感じにマッチしていてとっても美味しい。
「ヒカリちゃん・・・む、無理しなくていいんだよ?」
「ヒカリ、出したかったらここに出せ」
なぜか心配そうな表情で私を見つめる真琴先輩と遙先輩。遙先輩は手の平まで私に差し出してくれている。
「へ?あの・・・どうしたんですか?すごく美味しいですよ?」
「だよねぇ?!ハルちゃんもマコちゃんも食べてくれないんだよ!こーんなに美味しいのに・・・ほら!江ちゃんと怜ちゃんも!」
そう言いながらポテチの袋を差し出す渚先輩。向けられた江先輩と怜先輩はなんだかものすごく迷惑そうな顔だ。