第3章 きみに会えてよかった
うずくまってぼんやりそんなことを考えていたら、とてもそんな人は現れないような気がしてなんだか悲しくなってきてしまった。
(お腹空いて泣きそうなんて、ホントに子供みたい・・・)
瞳にじんわりと涙が浮かんでこぼれ落ちそうになっていた、その時だった。
「どうしたの?大丈夫?」
顔を上げて見ると、そこには女の子みたいに可愛い顔をした男の子がいた。男の子、というのは失礼かもしれない。ネクタイの色をよくよく見れば、その人は2年生。先輩だった。
「い、いえ・・・あの、えっと・・・」
突然のことにびっくりしてうまくしゃべれないでいると、その先輩の後ろからまた別の眼鏡をかけた男の人が顔を出した。
「どうしたんですか?渚くん。えっと、こちらの方は・・・」
「ああ、怜ちゃん。あのね、この子座りこんじゃってなんだか具合悪そうだったから・・・」
なぎさ?れい?男の人なのに、なんか女の子みたいな名前。ボーッと他人事みたいに二人の話を聞いていたら、急になぎさって呼ばれていた方の先輩がしゃがんで、その顔が私の目の前に来た。
「わっ!あ、あの・・・」
「ね、保健室行く?歩けないなら、僕達でおぶっていってあげようか?」
「い、いえ、そういうわけには・・・」
「大丈夫!僕達は先輩ですから!後輩を助けるのは当然の役目です!なぁーーっはっはっはっは!!」
「もう怜ちゃん!1年生の前だからって先輩ぶってカッコつけないの!てゆうか全然カッコよくないし!」
「こ、こら渚くん、何言ってるんですか!カッコつけてるなんて、だ、断じてそんなことは・・・」
・・・眼鏡の先輩が高笑いし出したと思ったら、今度はなんか二人で漫才みたいなこと始めちゃった。なんだろう、この人達。でも、なんか・・・・・・
「あ、あのっ!わ、私、お腹空いてちょっとふらふらしちゃっただけなので・・・大丈夫ですから気にしないで下さい。ありがとうございます」
本当のことを言うのは恥ずかしかったけど、二人のやり取りがなんだかとってもあったかい感じがして、私はありのままを伝えた。お腹はまだ空いているけれど、優しく心配してもらって心が軽くなったせいか、なんとか家まで帰れそうなぐらいに気力が回復していた。