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君と並んで歩く未来

第2章 神の舌


箸を持ち一粒だけ持ち上げる。ゆっくりとした動作で口に運ぶ。口に入れたあと広がるその香りと体験したことのない感触に思わず審査を忘れて味わってしまう。ハッとしてその感触の正体を知るべく二口目を口に運ぼうとするがそこで創真が
「あれー…二口目イッちゃうの?一口だけって聞いた気がするけど」
そのからかうような言葉に顔を赤くするえりな

その光景を見ながら瀬凪は考えていた。このまま行けば恐らく創真の料理は認められるだろう、と。しかし自分の料理は口にしてもらえるだろうか。瀬凪の料理は香りもそうだが箸を付けてもらわないと他との違いが分かりにくい。さてどうするかと考えふけっていれば

「あと、瀬凪の料理だってすげーぜ?」
創真がそう言った。瀬凪の意識が戻った

「…どうぞ」
スっと先程のように差し出した。今度は創真の料理を食べた手前断れないのか、瀬凪の手から受け取り箸を付けた

「……!」
箸を付けた瞬間ふわりと香ってくる胡麻油の香り。その食欲を唆る香りに誘われ口に運ぶ。口に入れた瞬間ぶわっと広がる胡麻油と焦がし醤油、ニンニクの香ばしい香り。噛み締めるたびにご飯と卵が絡み合う

「………っ!なんで…」
何故生卵にこんなにも多くの食材の味が?
その答えはすぐに分かった。そう言えば彼女は生卵を炙っていなかったか?しかし卵は火が通っていない生の状態だ。どれだけの技術がこれを作るのに必要だろうか
確実に手応えのある反応に創真はニヤニヤと笑いながらえりなに近寄る
「どーよどーよ!食わずに帰らねーでよかったろ?」
馬鹿にするかのような物言いに頬を染めて言い返す
「だ…黙りなさい!まだ審査は途中よ…!」
創真は箸でふりかけを掴み言う
「こんなありふれたメニューでも創意工夫で逸品に化けさせる!」

これがゆきひらの料理だ!
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