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【YOI】君と、お前と、バンケで。【男主&ユーリ】

第1章 新参者の僕


我ながら現金だと思いつつも、胸につかえていたものが取れたような気持ちになった礼之は、やがてオタベックともポツポツと話を始めていた。
「素晴らしかったぞ」
「何がですか?」
「お前のFS。『サユリ』の振付を良く理解し、その上でお前にしか出せない魅力に溢れていたと思う」
「あ、有難うございます。アルティンさんも、純さんの事ご存知だったんですね」
「オタベック、と呼んでくれ」
スケオタやファンの間で今でも純の代名詞とも呼ばれている演目から、ユーリが純をそう呼んでいるのを知っている礼之は、目を丸くさせながら尋ねる。
「サユリの事はユーリからよく話を聞いていたし、実際に会った事もある」
「そうだったんですか」
「もっとも最近では、サユリよりも『サムライ』の話題の方が、圧倒的に多いがな」
何かを含んだようなオタベックの物言いに、礼之はもう少しで手の中のコーヒーカップを滑り落としそうになった。
「えっと、それって…ユ…プリセツキーさんが、僕の事を?」
「『プリセツキーさん』とは、誰の事だ?ユーリが聞いたら怒り狂うぞ」
しどろもどろになる礼之にそう返しながら、オタベックはメールやネット電話の度にユーリが彼について話をしていたのを思い出した。

『歳下のライバルが現れた。ちょっとズリィくらいクソヤバイあだ名持ってんだけど、ジュニア時代の俺の記録全部塗り替えて来た根性のある奴だ。ま、俺が返り討ちにしてやるけどよ』
そう言いつつも、新たな出会いと戦いの予感に嬉しそうな顔で語るユーリと、話題の端々に出てくる『サムライ』の存在に、オタベック自身も興味が湧いていた。
しかし、GPS参戦中から腰の調子が思わしくなかった為他に目を向ける余裕がなかったのと、何かにつけてユーリが連呼していた『サムライ』に妙な先入観を持っていたのか、まさかその正体が金髪碧眼の少年だとは思いもよらなかったのである。
(サユリの時といい、もう少しユーリは人物紹介の際に捕捉を加えてくれないものか)
そんな風にオタベックが考えていると、視界の端に見覚えのある金髪が映った。
その正体に気付いたオタベックは、ふと悪戯心が芽生えると、先程よりも礼之に接近した。
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