第3章 まんざらでもない
〜華美side〜
「せんぱ〜いっ!」
笑顔で手をブンブン振りながら近付いてくる後輩。
周りの人も少し驚いて振り向いている。
恥ずかしいと思いつつ、反応しないと可哀想なので、挨拶だけしておいた。
「おはよう。」
「おはようございます!!先輩、今日も可愛いです!!」
「それいつも言ってくれるけど、私なんか可愛くなんかないよー」
「いえ!先輩、オレ本気で言ってますからね!本当に可愛いですよ!!」
「あーもうはいはい、わかった、わかった。」
なんて言いながらも、少し嬉しく思っていることは内緒。
告白されてから、早いもので1ヶ月。毎朝、このように学校の最寄り駅まで迎えに来る後輩・・・犬夜くんは学校の近くに住んでいるらしい。こうして迎えに来ることを、初めは迷惑に感じていたが、今はもう慣れた。
「〜〜…って先輩、聞いてます?」
「え、ああごめん、別のこと考えてた」
「もー!先輩、オレの話聞いてくださいよ!」
「だって面白くないんだもん」
そう言うと、悲しそうな顔になって、シュンと落ち込む。
「ふふ、嘘だってば。」
「っ!」
むー と怒るような素振りを見せる犬夜くん。実際はそんなに怖くはないけど。むしろ、かわいい、なんて思う私はやっぱりそうなのかなぁ…ま、これは一旦置いておこう。
「ほらほら、さっきの話の続きは?学校着いちゃうよ?」
「は、はい!さっきの話の続きはですね、〜〜」
嬉しそうに話す犬夜くんを見ていると、学校までの道があっという間に感じられた。