第3章 写しへの接し方
本丸につくと手分けして荷物を荷車から降ろした。
「わしは馬を馬小屋へ連れて行くぜよ」
『よろしくね』
馬と荷車は陸奥に任せて、残りの皆で荷物を広間に運んだ。
人数も増えたので、新しく買ったテーブルをもう1つのテーブルの隣に並べた。
その上に町で買った物を並べる。
『じゃあ自分のものを取って部屋にしまってね』
各々自分の衣類を受け取り、自室へと戻る。
「俺はどの部屋を使えばいいんだ?」
『好きな部屋使っていいよ。この先刀剣男士が増えたら部屋替えをするかもしれないけど』
「ああ分かった」
『鯰尾はどうする?』
「俺は五虎退と同じ部屋を使います」
兄弟だもんな。
五虎退は嬉しそうだ。
「これをしまったら錦鯉を池に放しに行こうか」
「は、はい!」
「ぼくもごいっしょしていいですか?」
「もちろん!」
4人を見送り、陸奥が戻ってくる間に名札掛をどこに掛けようか考える。
この本丸は中央が吹き抜けになっており、中庭がある。
本丸の外側に面している部分はほぼ全て障子戸なので掛けられない。
しかし、中庭に面している側は壁がある。
私は中庭側の広間の壁に掛けることにした。
付属の金具は簡単に取り付けられるものだったので助かった。
『おお、おお!なかなかいいじゃん』
後は札に名前を書いて完成だ。
「主、これはなんじゃ?」
『あ、陸奥。これは当番表みたいなものかな。この札に名前を書いて、で、その日の役割の所に掛ける。これなら一目で誰が何の当番か分かるでしょ』
「ほりゃあ便利じゃのう」
『でーしょ!でも皆の名前書ける自信ないかも……』
「ほがなことならわしにまーかせちょけ!筆と墨汁はあるがか?」
『んん…あ!筆ならあるよ。今持ってくる』
急いで部屋へ戻ると、鯰尾、五虎退、今剣が私の部屋の前の縁側で寝そべっていた。
『何してるの?』
「今ちょうど錦鯉を放したんですよ。まだ小さくですけど、ほら!」
「かわいいです」
「おおきくなるのがたのしみです」
池を覗くと、小さいながらもその鮮やかな色は水面を彩っていた。
『可愛いね――あ』
そうだ、こんなことをしている場合じゃなかった。
広間で陸奥を待たせていたのだ。
文机の引き出しから筆を取り出した。
『これもいるのかな?ねえ、これって文字を書くのに必要なの?』