第5章 激情

下着の上から撫でるような動きをしていた手が、その隙間から潜り込んでくる。


「…っ…は…ぁっ…！」


肉芽を緩く撫でられる、たったそれだけの刺激なのにナツの口からは甘い声が漏れた。

身を捩る度に鳴り響く金属音。
目の前では酷薄な笑みを口元に浮かべているロー。


だから何故この人は私にこんなことするんだと、口には出さないもののローを非難する気持ちが心の中を埋め尽くした。


「舐めろ」


ナツが声を押し殺していると
ローが下着の中から指を抜き、その指で唇を撫でてくる。

形をなぞるようなその動きと自身から溢れ出るそのぬるついた粘液の香りに、ナツは思わず顔を背けた。


「うっ…ぐ…ぁ」


顔を背けた瞬間、彼の指は強引に捻じ込まれる。

舌を捕らえられ撫でまわすその動きに、ナツの唇からは唾液が流れ落ちた。


「っは…んぁ…ッ！」


空いた手で摘ままれる胸の尖り。

口を閉じることを許されない彼女の喘ぎ声は、室内に響き渡っていた。


「…ん…ふッ…ぁ…」


そして頃合いを見て口内から指を引き抜くと、下着をずらし肉芽に指を這わせながら中指を彼女の秘部へ宛がう。

先ほどよりも濡れているそこにローは口元を吊り上げると、焦らすように撫で上げた。


「……ッ…」


ナツは来るであろう衝撃に身構えたものの、それが訪れる気配はない。

秘芽を擦るような動きに身体を震わせると、再び口づけが落ちてくる。

咄嗟に歯を食いしばるナツを見下ろすローの瞳は、すっと細められた。

ローの舌が彼女を歯列をなぞっていく。



「…～～ッ！」


ガリッ


突然与えられた圧迫感に、ナツはローの舌を噛んだ。
口内に血の味が広がる。

無遠慮に差し込まれた中指。

思わず噛んでしまったものの、彼の表情はそれを非難するでもなく無表情のままだった。

身を引いたローが、至近距離でナツの瞳を見つめる。

暗い狂気が宿る瞳には、快楽に顔を歪ませる女の顔が映っていた。









静まり返った空間に、携帯の電子音が鳴り響く。

ナツは思わず身を竦ませた。