第24章 結婚
「....んっ....うまい....」
シュウは控え室で林檎を食べながらソファーに寝転がっていた
手に持つ真っ赤な林檎を見て、もう一口歯を立てる
(そろそろ、らんが向かってるか....)
何をしていても、頭に浮かぶのは愛しい彼女のことだけだった
彼女は自分からのプレゼントを気に入ってくれているだろうか
シュウはふっと笑う
自分でも驚いている
アイツに出会って、いろんなことが変わった
それは自分でも自覚してる
そうだ、あの日から俺の時間は動き出した
初めて音楽室で会った時のことは、今でも自然と頭に浮かんでくる
俺の大好きなラフマニノフの奥から聴こえてきた、自由を奏でるメロディー....
いつだったか、親父がバイオリンを贈ってきた事があった
今ならその意味がわかる気がする
音楽は人を魅了し、自然と人を惹き付ける
『自信を持て』
父の言葉が頭をよぎる
音楽は俺とらんを繋いでくれた
この先も....ずっと....
「シュウ」
身体を少し浮かすと、扉の前には正装したレイジの姿があった
「なんだ?」
レイジはため息をつく
「なんだじゃないですよ。
寝転がらないで下さい。皺になります。
それに、もう時間ですよ」
シュウはゆっくりと起き上がる
「他の奴等は?」
「もう、会場に行っています。
貴方も早くしてください」
シュウは頭を掻きながら、ジャケットを羽織る
「じゃあ、行ってくる」
シュウは一言レイジに挨拶して、会場に向かった
1人残ったレイジはため息混じりに呟く
「とうとう....結婚ですか....」
レイジはくすっと笑う
「....おめでとうございます。シュウ」