第24章 結婚
「すみませーーー
勢いよく扉を開ける
しかし、私は驚きで固まってしまった
「....らん....よく似合ってるよ」
この時私はさぞ間抜けな顔をしていただろう
目の前で微笑むのは....
『アズサ!』
彼は着慣れない黒いスーツを身にまとっていた
「久しぶりだね....」
彼とはあの日以来、1年間会っていなかった
アズサはらんに手を差し伸べ、「行こう」と一言告げ、歩き出す
「どうして....アズサが?」
彼は私に歩幅を合わせ、ゆっくり歩いてくれる
「シュウさんが....招待状を贈ってくれたんだ。
....兄貴なら必ず参加しろって手紙付きで」
「ッ!シュウが....」
私は涙が込み上げてくる
なるほど....確かに彼は私に親族が居ないのを気にしてくれていた
....ッ....本当に彼には適わない
下界で式を挙げる理由はこの事もあったのかと納得する
「でも、他のみんなは?」
来たのが、アズサだけなのが不思議だった
「ふふっ。大丈夫。すぐ会えるから」
アズサは握る手を強める
そこからは、今までは無かった体温と呼べるそんな物が感じられた
「アズサの手....温かい」
彼が人間に戻った事を改めて実感する
アズサは先を見て立ち止まり、らんを抱きしめた
片腕の中にすっぽりと埋まり
頭にキスを落とされる
「くすぐったいよ?アズサ」
アズサは可愛いと頭を撫でてくれた
「....俺はらんに、迷惑ばっかりかけて....お兄ちゃんらしい事....何も出来てなかった」
そんな事ないって言うとアズサは笑顔を浮かべた
私は彼の笑った顔が好きだった
偽りの無い、綺麗な笑顔
彼はまた私を抱きしめ
「らんは人を幸せにするイブだね」
アズサは耳元で囁く
『結婚....おめでとう』
そう言って、アズサは強く抱きしめる
ーーありがとう。アズサ