第22章 自由
らんもまた、生と死の狭間に居た
"シュウを失いたくない"ーーー
(この感じ....そうだ....あの時も....)
そう強く思ったこの感情と似たモノを何処かで感じたことがあったのを思い出す
ーー熱い....ッ....苦しい....
....お父様....お母様....ッ....ーーーー
全てが終わり、始まったあの日の記憶が蘇る
満月の夜、突然家の中が騒ぎ出し、他のヴァンパイア達が襲撃してきた。
爆音が家の中に広がり、城の中には血の匂いが充満していた
私は怖くなって、起き上がれないお母様の傍に駆け寄る
「....おかあさま....ッ....」
震え、泣きじゃくる私をお母様は力を振り絞って抱き締めてくれた
そして、お母様は耳元で囁く
『時がくればその血はきっと教えてくれる....
らん....愛しています....
だから貴方だけでも....にげて』
お母様は必死に声を出す
しかし、遂にこの部屋も見つかり、ヴァンパイアが押し寄せてくる
「っ!」
扉の向こうには一面の火の海が見えた
「穢らわしい一族め....!!殺してやる!!」
ヴァンパイアは剣を振り上げ、らん目掛けて振り下ろされる
私は殺されると思い、怖くなって目を閉じた
しかし、痛みは襲ってこず
その代わりに私の頬に何か滴り落ちる
恐る恐る目を開けると...
「ッ....おとうさま....?」
目の前には腹部から血を流す父の姿があった
この日の事は、この時の衝撃で、ずっと忘れてしまっていた
ーー....あの時も私はお父様に庇われて....
シュウとお父様が重なる
ごめんなさい....私のせいで傷つけた....
私は....泣くことしか出来なかったのに....ッ
でも....シュウも同じように....
嫌だッ....もうこんな思い....したくない....ーーー