第22章 自由
「シュウ」
不意に顔を上げた時見たベアトリクスの表情は歓喜に満ち溢れ、ずっと昔に見た、母親の顔に戻っていた
「貴方は当主になったのですね」
ベアトリクスは満足そうに微笑む
「貴方はここに居るべきではない。
元の世界に戻り、逆巻を....世界を統べりなさい
それをあの人も望んでいます」
真っ白な世界に一つの暗い道が出来る
「もう時期、この世界は崩れます」
「!」
「カールハインツが死んだ今、もはやこの世界は維持出来ない
私もついに永遠の眠りにつけます....」
ベアトリクスは悲しげに微笑む
「俺の力じゃ無理なのか....?」
親父の力を受け継いだ俺になら....
「いいえ。その必要はありません」
ベアトリクスはシュウと目を合わす
「あなたにはこの世界は必要ない....
ここはカールハインツに足りなかった物を補うために出来た世界....
しかし、貴方はお父様とは違い
それを既に宿している....」
「....ッ」
「シュウ。貴方は大きく立派に育ちましたね」
カールハインツに足りなかった物....
「....最後に1つ。
ここに貴方を留めたのはカールハインツではない....」
「は?じゃあ、誰が....」
すると、1人の姿が思い浮かぶ
まさか....
「彼女は不思議な力を持っているようですね....
その力はカールハインツもを上回るでしょう
しかし、その強大さゆえに彼女は闇に囚われている
逆巻の当主なら、彼女を救いなさい。
それが、貴方の義務です」
ベアトリクスの体から光が広がる
この世界が崩壊しようとしているからだろう
「....おい」
「?」
シュウは静かに口を開く
「ずっと聞きたかったことがある
....あんたはレイジの事を....恨んでるか?」
経緯はともかく、彼女の生を終わらしたのは息子である、レイジだった
きっと、あいつは認められたかったんだろう
親父にも母親にも....
彼の問にベアトリクスは微笑む
「いいえ
"愛しています"
レイジの事も。シュウ、貴方の事もーーー
そう告げたベアトリクスの姿が光に変わる
シュウは思わず目を瞑った