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不完全な『アダムとイブ』

第21章 永遠


ーーーお前の血を....吸わしてくれ....


そう囁かれたらんは首を横に振る

「なに言ってるのッ...シュウ。私の血は....」

「あぁ。分かってる。
だから....あんたの血で、俺を終わらせてほしい」

シュウの目は真剣だった
しかし、私は素直にうなずける訳がない

「そんなのッ、だめ!
それに....今からでも急いで治療すーー

『あんたは?』

シュウの問いかけに、辺りが静まり返る

「え....ッ....」

驚く私の手を握り、心臓まで持っていく

「....あんたの鼓動...出会った頃より、ずっと早い...」


「!...」

らんはまっすぐ見つめるシュウから目をそらす

彼は知っているんだ
私がもう永くないこと、私の身体のこと....

だけど

「....シュウは死んじゃだめ....絶対に....ッ」

少し彼の腕を押し返す

しかし、シュウは逃がさない様に強く腕を掴む

「あんたを1人にはさせない」

「ッ!!」

嬉しかった
一瞬、彼に甘えたい....そう思ったが、直ぐ思い返し、首を振る

「ったく....あんたは素直に頷いとけばいいんだ」

「そんなわけにはいかないよッ!
だってシュウは....」

彼女の憂いの表情を見てシュウはため息をつく

「....らん....俺は王になった」

「え....ッ」

「....俺は....殺したんだ。親父を....」

カールハインツ様が....死んだ....

言われてみれば、彼の体からはあの方の魔力が感じられた

ドクッ!!
心臓が締め付けられる

「....俺を恨むか?」

らんは首を横に振る

「シュウを恨む理由が無い....あの方はこれを望んでた。やっと....解放されたんだね....」

私の目から出た、大粒の涙が1つシュウの頬に落ちる

「....あぁ」

「シュウが....ヴァンパイアの王....」

らんは泣きながらも笑顔で微笑む

シュウが王ならきっとこの世界は大丈夫だ

「....」

シュウは苦しみながら身体を起こす

「シュウッ....だめだよ。動いたら....」

ぐいっ

彼は私の身体を抱き寄せ、唇を奪う

「んっ....」

そのキスには悲しみも苦しみも分かち合いたい

そんな思いが溢れていた....



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