第21章 永遠
今日のキスはいつもとはまるで違った
弱々しく、唇が震えている
(シュウ....)
唇を離し、シュウは抱きしめながら言葉を囁く
「....俺は王だ。だから....お前を見捨てるわけにはいかない」
らんは目をそらす
「だけど....シュウはもっと大きな物を守っていかないと....私なんかの為に死んじゃだめだよ....」
王が1人の為に犠牲をはらってはいけない...
彼はこれから世界を統べるのだから
「おい」
「ッ!!」
顔をあげた時に見たシュウはとても悲しそうで、ひどく傷ついた顔をしていた
「"私なんか"じゃない。
俺はあんたを愛してる。まだ分かんないの?」
「え....ッ....」
「あんたは将来、俺の嫁になる女だ。
大体、人を1人救えないような奴に....王が務まると思うか?」
「ッ!!」
「あんたを見捨てたら....それこそ親父の二の舞だ。
それに....」
シュウは私の頭を撫でる
「あんたの親父はそうしたんだろ?
最後まで....大切な物を守り続けた」
ーーお父様....ッ
曖昧な父の姿を思い出し
一瞬、ほんの一瞬だけシュウとお父様が重なってみえた
私は彼の言葉に否定出来なくなった
「....もう、俺は絶対に大切な物は失いたくない。あんたが居なくなったら....って考えたら、苦しみで胸が焼けそうだ」
ドサッ....
シュウは私の身体を押し倒す
そして....牙を出し、首元に近づく
「....シュウ....ッ....」
「....怖いか?」
静かに彼と目を合わせる
「うんん....むしろシュウが居てくれるなら嬉しいよ
私、最後はずっと1人で迎えるって思ってたから....
ありがとう。貴方に出会えて....私は本当に良かった....ッ」
らんは身体を少し持ち上げ、シュウの唇にキスを落とす
そういえば....初めてのキスもお前からだったな
「ふっ....俺が側に居てやる。永遠にな」
牙が喉元に差し込まれる
彼等は、闇の運命を受け入れた
2人が共に生きる時は限られていた
決して交わらない....二つの糸....
彼等は共に死を選んだ
終焉の懐時計が示した時
2人の時間は終わりを告げた
しかし、最後の言葉は重なり合う
『『愛してる』』