第20章 道標
「....よくも....みんなを....」
茂みから出てきた彼女の顔は怒りで満ち溢れていた
「会えて嬉しいぞ」
セイジは不敵な笑みを浮かべる
「........」
私は警戒する
「もう、数十年姿を現して居なかったそうだな
まぁ、お前達にとったら数十年など風のように過ぎてゆくのだろうが」
私が奴等に捕らえられてから、もう何百年過ぎたのだろうか....
「....でも、その間の1日だって、貴方の一族に受けた屈辱は消えてない....この傷痕も」
自分の首元の痣を指差す
「ふっ....お前が姿を晦まして、先代は狂ったようにその血を求めたそうだ。
お前の血を手に入れるという事は、ヴァンパイアを手駒にする事だって、造作もないからな」
「っ!!ふざけないで!!」
「はっ、そのお前の血でどれだけのヴァンパイアを殺したと思ってる」
「ッ....」
(うるさい....ッ....)
目の前が暗くなる、鼓動が早い....苦しい....
「ヴァンパイアとは我々人間を餌としか思っていない、結局はお前達は悪でしかない
だから、貴様も利用してやったんだ。実に巧妙な策だろう?
ヴァンパイア共は愚かだ
快楽に溺れ、その蜜は毒に変わり、その命を自らで終わらせるのだからな。くくっ....」
セイジは嘲笑う
しかし....
「....違う....ヴァンパイアも人間も同じ....」
「?」
手を握りしめ、震える声を何とか繋ぐ
「人間だって、善人が居れば、悪人だって居る....ヴァンパイアも同じ。
みんながみんな悪い人じゃない....少なからず、私の周りの人はそう。
でも....貴方達は人間のふりをした
"悪魔"ね」
セイジは歯を噛み締める
「人間を守るふりをして、自分達の利益ばかりを考えてる。貴方達は神の教えを紡ぐ者達でしょ?貴方達は強欲ね」
もう、彼等は聖職者ではなく、血と金に取り憑かれている牙のないヴァンパイア....
「....貴様は一体何をしに来た....」
セイジからは先程の余裕な表情は消えていた
私がここに来た理由....それは....
「....貴方達を殺す....」
一つの言葉が頭をよぎる
『ヴァンパイアも人間も両親が愛した存在....』
ーーーーごめんなさい....お父様、お母様....