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不完全な『アダムとイブ』

第19章 終始


「はぁ....はぁ....」

部屋の中央で手首を掴み血のついた剣を握り、立つシュウ

シュウの視線の先には

「ぐっ....私の負けだ....ッ....」

腹部から血を流し苦しそうに倒れ込んでいるカールハインツがいた

だが、シュウはこの状況に納得出来ずにいた

「....なんで、なんで本気で戦わなかったんだ!....あんたの力はこんなもんじゃないだろ....!!」

カールハインツは大きく深呼吸をする

「....いいや....これがお前の実力だ....

お前になら....ッ....任せ....られそうだな

この"家"も"らん"のことも....」

シュウは剣をその場に投げ捨てる

「....っ....お前にも守れなかったモノを、俺に任せるのかよ...ッ」

カールハインツは偉大すぎた
この先、彼以上のヴァンパイアは存在しないだろう
それほど、彼は神に近い存在だった

「....シュウ。貴様に足りないものを....教えてやろう....


それは....


"自信"だ」

シュウはハッとする

「....お前は私とは違う。
貴様はさっき、『人もヴァンパイアも、1人では何も出来ない』と言った....

その通りだと....思ったよ。

私は力は持っていても....大切な物は手に出来ていなかった。
全て、計算した上で行動する
あの日を境に私はそう変わった

あの日....隣星家が燃え、友を失い、ヴァンパイアとして生きるにはこの世界は酷く退屈だと思った....

妻を娶り、お前達息子が産まれ、一族が増えた

だが、妻は堕ち....お前達とは距離を退いた

全ては私の責任だ....


だが、シュウ。お前は違う。
お前はその事に気づいた

貴様は....自信を持っていい....」


「親父....」

カールハインツは咳き込み、腹からは血が流れ続ける

「こんな不甲斐ない父ですまなかったな....」

シュウは初めて、父と思いを共有出来た

しかし、この状況も長くは続かない....

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