第19章 終始
ー魔界ー
カチッ....カチッ....
時計はゆっくりと時を刻む
「時とは....無常なモノだな....」
魔界の城の玉座に腰掛けるカールハインツは自らの懐中時計を閉じる
すると、目の前の大きな扉がゆっくりと開く
「待っていたぞ....」
そこに踏み入れたのは
『シュウ』
カールハインツの鋭い目がシュウに向けられる
「意外だった。まさか、お前がらんの元から離れるとはな....」
「離れたつもりは無い....ただ、決着をつけに来た」
「ほう....」
「決着....というのは、次期逆巻当主の事か?」
今まで、カールハインツと直接、当主の話をしたことは無かった
「あぁ」
「....お前がこの家を継ぐのか?」
カールハインツは試すような口調で言葉を紡ぐ
「正直、俺はつい最近までこの家の当主になるなんてこと....絶対にしないし、したくないって思ってた。
あんたはしぶといし、俺よりもレイジやアヤトの方がしっかりしてて、自信もある」
「........」
「俺には、人の上に立つなんて....向いてない。それに....」
シュウは目を閉じる
「当主になれば....嫌になるくらい守らないといけないものが付いてくる。
俺は....それを失う自分が想像出来た....
だから....ずっと逃げてきたんだ。この運命からも、親父。お前からもな。」
「シュウ....」
「でも、俺は気づいた....らんと出会って。
....あいつは自分を犠牲にしても他の奴を助けようとする....あれが王の器なんだろうって俺は思った。
でも、人もヴァンパイアも...."1人"じゃ何にも出来ない....」
「!」
「だから、守りたいものがあるってのは幸せな事なんだ....
見ているだけじゃ何も変わらない。
目をそらし続けているだけじゃ何も救えない。
そして....臆病な俺を起き上がらさせてでも、助けてやりたいと、そう思わせる存在が出来た。
だから....」
シュウは剣をカールハインツに向ける
『俺があんたを殺す』
「レイジでもアヤトでもなく....この俺が」
シュウの目を見て、カールハインツは彼の覚悟を受け取った
「いい目だ」
これで最後の望が叶うな....
私を殺せーーーー