第19章 終始
無神兄弟は追ってくる者達から逃げ続け、森の中を歩んでいた
すると、一つの街に到着する....
「....ここって....」
無神兄弟にとって、思い出したくない苦い記憶....
そこは昔、人間の頃に住んでいた街だった
全てが始まった場所であり、全てが終わった場所でもある....
「ッ....」
コウは唇を噛む
みんなにとってここは辛く、苦い、闇だ
「....大丈夫?コウ」
アズサが心配そうに声を掛ける
「....大丈夫だよ。
ここは大っ嫌いな所だけど、みんなと出会えた場所でもあるからね」
ここで、同じ意思を持つ大切な兄弟が出来た
そして....
「ユーマくん....みんなは此処に住んでいたの....?」
隣を歩くユーマに問いかける
「....あぁ。孤児だった俺達を聖職者共はかき集めて、この街の孤児院に閉じ込めた。
そんで、死にかけた俺達を救ってくれたカールハインツ様と出会ったのもこの場....」
ユーマは言いかけて軽く舌打ちをする
自分達はカールハインツを裏切った
なのに、改めて恩を感じる事はとても辛い
「....お前達。行くぞ」
前を歩くルキが少し苦しそうに声を出す
悟られないようにしてはいるが、ユイやコウ達にはお見通しだった
この場所で、ユイが想像出来ないような、酷い惨劇が聖職者によって行われていた
自由なんて、当たり前に持っていると思ってた
でも、自分もこの状況になってよく分かる
自由になりたくてもなれない者が居る....
彼等のように、たとえヴァンパイアになっても自由を手に入れられない
そんな人達を解放したい、ユイはそう強く思った
風が吹き、みんなは立ち止まる
「....この気配....」
「動き出したか....」
1人ユイは何のことか分からず、戸惑う
「....らんが追ってきてる」
「えっ....らんさんが....」
「きっと....カールハインツ様の....命令が下されたんだ....」
アズサは寂しげに呟く
「流石、俺達の妹だね」
「あぁ....」
心無しかみんなが微笑む
ユイにはその微笑みがとても心寂しそうにみえた
....まるで、"捕まえてくれ"そう言っているような....