第18章 使命
ー無神家玄関ー
シュウが目を覚ますと一緒に寝ていた筈のらんが居なかった
なんだか胸騒ぎがして、シュウは彼女を探していた
(どこ行った....まさか....)
彼は急いで外に出ると、庭のほうから薔薇の香りに紛れて、らんの匂いがした
らんは赤い薔薇園の中に居た
「ッ....」
月を見上げる彼女の横顔はとても儚げだった
ぎゆっ....
今にも消えてしまいそうな彼女を後ろから抱きしめる
「シュウ....」
「....あいつらの所に行くのか?」
シュウは全てを知っていた
らんは首を縦に振る
カールハインツからの命令は下った
もうこれ以上、先延ばしには出来ない
「お前は行って、あいつらを捕まえるのか....?」
らんはシュウから少し離れ、靡く薔薇に手を添える
「シュウ....確かに私はあの方の命に従うつもり。でも....
これは私が決めたこと....
私の時計はあの日から止まってしまった....
だから
全てを終わらせに行く
たとえ、自分の時が終わってしまってでも....
じゃなきゃ....永遠に私は囚われ続ける....過去にも未来にも....
そして....私は
シュウ....貴方と一緒に生きられる....そんな自由を手に入れたい」
らんは覚悟を決めていた
「なら、俺も行く」
その言葉にらんは一瞬戸惑う....しかし....
「....だめだよ。シュウ。
貴方には守るべきものがある」
彼の優しい言葉に甘えてしまいそうになる....
「お前....何言って....ーー
シュウは真っ直ぐな彼女の目に何も言い返せなかった
(守るべきもの....)
らんには見透かされていたようだった
彼にはもう一つ決断すべきことがある
「心配いらない....シュウならきっと大丈夫だよ」
「!」
彼女は眩しく、そして華やげに微笑む
この笑顔を守りたい....そう強く思うのは昔の彼からは考えられなかった
2人には....背負うものが多すぎる....
きっと自分達はどんな平行世界を見ても
出会うことは無かったのだろう
巡り会えたこの世界でも、2人は引き裂かれる
そんな運命を変えるために....私達はーーーー