第17章 逃亡
ーーーーアダムの林檎計画
カールハインツは呟いた
気がつくといつもこの世界に居る
神秘的な空間に1つ大きな木がある
周りにはたくさんの林檎が落ちていた
しかし、明らかにいつもとは違う
林檎の木の下に立っている1人の男がいた....
銀色の髪がこちらを向く
「久しぶりだな。カール」
その表情には懐かしさを伺える
目の前には嘗て死んだはずの友が居た
「久しいな....ユーリ」
しかし驚きはしたが、いつもと変わらない顔をする
ユーリの手には紅い林檎がのけられていた
「らんは元気か?」
まるで大事な娘を撫でるように林檎を触る
「....あぁ。
あの娘もすっかり成長し、自らの役目を理解している」
ユーリは「そうか」と一言いい、空を見上げる
寂し気な横顔には、彼の本心が映し出されてあった
本当の事は言わない
らんのそうゆうところは父親似だろう
「ユーリ。すまなかったな。私はあの日....」
全てが終わり、始まったあの日を思い出す
隣星家が襲撃されたあの日、カールは下界に行っていた
知らせを聞き、戻った時にはもはや隣星家は火の海だった....
その時、カールハインツはコーデリアとリヒターを使い、あの計画を実行しようと決めた
「なぜ、お前が謝る。お前は、王の務めを果たした。
それに、娘の事は本当に感謝している」
ユーリは微笑み、林檎を軽く上に投げる
「だが、もうあの娘にも時間がない」
カールは呟きユーリの手が止まる
「あぁ。あの娘には、本当に辛い運命を背負わせてしまった....」
彼女にはヴァンパイアを苦しめる血が流れており、今や自分の身までも侵食されつつある
「だがな、あの娘は自らの運命を受け入れ、新たな道を見つけ出す」
「何故、そう言いきれる」
「あの娘は私達の誇りであり、唯一の希望だ。そして、何れはこのユーリフォードの後を継ぐ者だ。
お前なら、この意味を理解できるだろう?」
嘗ての隣星家当主の存在を思い出す
誰もを大らかに包み、自由に生き、ヴァンパイアと人間の共存を願った
今なら彼がヴァンパイアの王を退いた理由が分かる気がする
「あぁ。ならば、私も最後まで見守ろう。貴様の命運をーー」
眩しい光が輝く
ーーーーー頼んだぞカール