第16章 代償
ルキはらんの部屋に居た
らんはぐっすり眠っている
そんな彼女に手を伸ばすが
「ッ....」
静かに手を下ろす
ーきっと彼女は俺達に失望するだろう....
「らん...ッ....」
ルキは思い切り歯茎を噛み締め口から血が流れる
信じていた者に裏切られ、置いて行かれる辛さは嫌というほど知ったはずなのにな...ーー
ルキは部屋を出ようとする...
しかし
「ルキ....?」
「ッ!!」
らんは目を覚まし、ルキのシャツの袖を掴む
起きたばかりで目がよく見えない
「らん....ッ....」
袖を掴んでいた手を離され、その代わりルキに抱きしめられる
ルキの胸の中は温かかった
一方、ルキは動揺していた....
「ッ....すまない....らん....俺は....」
触れてはいけない、そう思っていたのに....
何故なら....俺達はーーー
「いいんだよ。ルキ」
ルキはらんを抱きしめる腕を緩める
「ルキは何も間違ってない..」
シーツを軽く握る
「...ルキは今まであの方へ恩を返す為に、そして、みんなの為に生きてきた
もう、貴方は自分の為に生きていいーーー
ルキの心の曇が晴れていく
彼はずっとこの言葉が欲しかったのかもしれない
「お前には、感謝してもしきれないな」
ルキは額に1つキスを落とす
私は思わず、ルキの首に手を回し抱きしめる
(....離したくない....)
その行動には彼女の本心が秘められていた....
困らせてはいけないのに....
ルキは私の頭を優しく撫でる
だが、それはルキも同じ気持ちだった
「....お前は俺達の自慢の妹だ....
だから....お前はあの方の命令には絶対に従うんだ。どんな事があっても....」
彼の言いたいことはわかった
分かるからこそ、胸が締め付けられる様に苦しい
「許されるとは思っていない....だが、たとえ、お前が俺達を恨んでも....ずっと、お前は俺達の大切な妹だ...」
恨むはずない....
らんは知っていた、これも彼等が私の為を思っての事だということも....
瞳から涙が零れる
「さようなら....ルキ....」