第16章 代償
ーーーー懐かしい夢を見た....
カールハインツ様の屋敷に来てからの数十年の記憶がフィルムの様に蘇る
みんなと初めて出会い
共に時を過ごし
兄妹となった....
私にとって彼等は光だったのだろう
ーー私達が、下界に向かう時
「らんよ」
カールハインツ様は私を呼び出した
「なんでしょうか」
「お前に1つ言っておきたいことがあってな」
カールハインツ様の手には紅い林檎が握り締められている
「....アダムの林檎計画が遂行された時....
お前の望みを何でも叶えてやろう」
「望み....?」
カールハインツ様は林檎を月に照らし合わせる
「あぁ。お前には今までもこれからも、苦労をかけるだろうからな」
らんは首を横に振る
「ですが、私はカールハインツ様にここへ迎え入れて貰えただけで....」
彼女には欲が無い....それは良い事だが、私には彼女が哀れで仕方無かった....
「らん....この計画にはそれ程の価値があり代償がいるという事を覚えておきなさい」
「....はい」
私が願う事は
『ルキ達とカールハインツ様の幸せ』
それだけだった
....それは年月が経った今でも変わってはいない....
『らん』
夢と現実の狭間で自分を呼ぶ声がする
聞きなれた、安心出来る大好きな声だった....
ルキ....ーーーーー