第16章 代償
2人は屋上に上がり
ユーマは抱え上げている私をやっと、下ろしてくれた
そして、ネクタイを外し水道の方に行く
「ほら、足出せ」
しかし、足の腫れた部分から血が出ているため横に首を振る
ユーマは躊躇う私の足を無理矢理掴む
「ッ!!」
「ったく、触ったくらいじゃ何ともならねぇよ。じっとしてろ」
ユーマは優しい手つきで冷やしたネクタイを足に結んでやる
「痛くないか?」
心配そうに、顔を覗き込む
「うん、大丈夫だよ。ありがとう」
優しいユーマになんだか、胸がいっぱいになる
いつも、世話焼きの良いお兄ちゃんなのに今日は特別優しい気がして、嬉しかった
ポンッ
ユーマは笑顔を浮かべる私の頭を撫で
寝転がり怪我をしてない私の足に頭をおく
「ふふっ。ユーマの髪ふさふさ」
髪を優しく触る
「チッ....くすぐってぇ....」
そんな事を言いつつ、手を止めると不満そうな顔をする
そんな彼にしょうがないお兄ちゃんだなと苦笑する
「てか、シュウの奴とは上手くやってんのか?」
「うん。仲良くしてる」
彼女の顔色が変わった
名前を出すんじゃなかったと少し後悔する
起き上がり、らんの腕をひっぱる
後ろから抱きしめ自分の胸にすっぽり埋める
「どうしたの....?ユーマ?」
私の肩に顔を埋める
彼はどんなに苦しくても言葉に出さない
だからこそ私は少し心配なんだけど....
腕の力が強まる
「なんだろな....なんか離したくねぇ」
(くそっ、ニートの奴に嫉妬するとか....だせぇ....)
いつも、甘えている兄に甘えられるのは不思議な感覚だった
私は体を傾け、ユーマの頬にキスする
「らん....」
突然の事に驚く
「大丈夫....私はどこにも行かないよ....?」
顔を上げたユーマは今にも泣きそうな顔をしていた
すまねぇ....らん....ーーーー
拳を握るユーマの手を掴む
「ずーっと....ユーマは私のお兄ちゃんだよ....何があっても....」
彼女の笑顔にはいつも安心させられる
「あぁ。そうだな....」
ユーマの顔にも笑顔が浮かび
手を握り返す
ありがとな....らんーーー