第14章 不完全
もう、何十年も前の事だけれど
あの日の事は明確に記憶に残っている
「今日からお前達の新しい家族だ」
カールハインツ様の後ろに隠れていたのは
人形みたいに整った顔、おひめさまの様な服を着せられた1人の女の子だった
その子の眼は透き通ったオレンジ色で俺達の心は揺らいだ
この子の綺麗な眼の奥底には闇があった
朧げで冷たい....この瞳を俺達は知っている....
まるで....昔の自分達のようだった
だからかもしれない
もちろん、あの方の願いだったからでもあるが、
俺達はコイツを家族と認めるのにそう時間は掛からなかった
「おい。来い。俺達が遊んでやる」
初めて手を伸ばした時、手に触れた時、
彼女は、泡の様に儚く、すぐに消えてしまいそうだと思った
あの方は2つ俺達に命じた
『らんの血を吸うことは絶対にしてはならない、そして....
彼女の実が熟すまで、他のヴァンパイアから彼女を護ってほしい』
カールハインツ様はそう仰った
俺達は最初はよく分からなかったが
彼女を....妹を必ず護ろうとそう決めた