第14章 不完全
逆巻兄弟と無神兄弟が産まれる少し前
魔界では、今より多くのヴァンパイアが長を巡り争っていた
候補であった逆巻家当主カールハインツとらんの父親である隣星家当主ユーリフォードはライバルであり、友人だった
しかし、ユーリフォードは突然、長の候補から身を引いた
結果ヴァンパイアの王はカールハインツとなった
その後
「ユーリ、何故だ!!」
納得のいかないカールは尋ねた
「私はお前に王になって欲しかった。
お前にはヴァンパイアをまとめ上げる力がある」
ユーリはカールの事を良きライバルと伴に、彼の事を認めていた
「それは、貴様だって同じだろう」
ユーリは微笑む
「それだけじゃない。
....大切な存在が出来た。私はその者と蔭のみで密かに暮らそうと思う。
お前だけは....たとえ王になっても友で居てくれ」
彼が愛したのは"人間"だった
ヴァンパイアの中で人間は餌の存在
それを妻にするというのは、禁を犯す事と同じくらい罪深い事だった
人間とヴァンパイア....お互いが利用し利用される関係
それが共存する世界はこの時はまだ確立していなかった
案の定、隣星家当主ユーリフォードは魔界から非難を浴びた
彼の妻は元は生け贄として連れて来られた者だった
だが、彼女は美しく、ユーリを魅了した
彼は一族共に陰の王として彼女と婚約した
そして、子供を身篭る
その後、彼等一族は夢を持つ様になる
『ヴァンパイアと人間が共存し合える世界をつくりたい』
それを行う先駆けとして、自分達は君臨しようとそう決めていた
しかし....
妊娠の際、彼女は心臓を圧迫され
寝たきりになってしまった
人間の体ではヴァンパイアの血に耐えることが出来なかった
その子は無事産まれたが
後遺症として呪われた銀の血を宿していた
この血を持つと、ヴァンパイアから非難され続け....この子の人生を変えてしまう
その子供がらんだ....