第11章 無神アズサ
私達は屋上に来ていた
「なに?話って....」
私は彼に自分の心情を気づかれないように問いかけた
ルキは少し話すのを躊躇う
「実はな....ユイ....いやイブをカールハインツ様に返そうと思う」
ーーーえ....?
私は彼の言う事が理解出来なかった
「え....なに言ってるの?ルキ....」
なんで、ルキが....そんな事…
「すまない。だが、俺達ではアダムにはなれない。それは事実だ。」
「俺達にはもうイブの血を吸う意義も無い」
「でも…アズサがアダムになる可能性だって!」
「お前は最初から知っていたんだろう?」
「え…」
「純血のヴァンパイアで無ければ、アダムにはなれない事を」
ルキの目は失望と後悔…
そして、彼等への嫉妬に満ちていた
「........知ってたよ…」
「だけど、私は誰よりも無神のみんなにアダムの資格があると思ってる!」
「綺麗事を並べたところで、それは空想に過ぎない!」
「....空想なんかじゃない!
私は確かに純血のヴァンパイアじゃなきゃいけないことを知ってた、けど、アダムになるにはそれだけが必要なんじゃない!」
アダムになる条件....それは....
『イブに愛され....イブを心から愛する事』
「!」
ルキはあの方にも同じ事を言われたのを思い出す
「まだ逆巻にイブが居た時、
彼等は純血だったけど、本当に大切なモノは持っていなかった
だから、あの方は貴方達にそれを託したんだよ」
「しかし、俺達がアイツを愛したところでアダムにはなれない。逆巻の連中の方が可能性は大いにあるだろう」
彼は自分の立場を理解しているが故に、自分を認めようとせず、意思を主張出来ないでいる
「ルキって、人の事は凄く分かってるのに、
自分の事は全然分かってないんだね」
「何が言いたい」
「貴方はイブの事をどう思ってるの?」
ルキは思考を巡らす
そして、本当とは逆の答えを導き出す
だが....
「本当の気持ちを教えて?」
ルキは彼女の目を見て、
今だけなら素直になってもいいのでは無いかと....そう思った
ルキの肩から妙な緊張がとける
「俺は....本当は
ユイを手放したくない」
この時、初めて私はルキの本心を聞けた気がした