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【イケメン戦国】短編集✲*゚

第1章 【織田信長】恋に揺蕩う





「千花、貴様には今夜、夜伽を命ずる」
「お断りします」


ぴしゃっと信長様の誘いを跳ね除ける。加えてつん、とそっぽを向くと、もう何度目か分からないこのやり取りに気を悪くする様子もなく、信長様はからからと楽しげな笑い声をあげた。


「相変わらず貴様は連れぬな」
「断っているのに、信長様が何度もしつこいんです!」


私も初めこそ、「夜伽」という響きに顔を赤らめたりしたけれど。こうも何回も冗談交じりに誘われていては、照れるだけ気力が勿体ない。

初めは「お館様を袖にするなど!」なんて怒っていた秀吉さんも、最近は見て見ぬふりをするようになった。細められた紅の双眸が、楽しげにこちらを見ているのを睨み返す。



「何故そうも貴様は拒むのだ」
「普通そうでしょう、そういう事は恋人同士とかでする物なんですっ」
「…愛だの恋だの、子供騙しだね」


ぽつり、と意地悪げに零した家康を今度は睨みつける。小さく首を竦めた家康は、付き合って居られないと言わんばかりにさっと立ち上がった。それに続く様に、皆が立ち上がり広間を去って行こうとする。

私もそうするつもりで、立ち上がろうとしたが、しかし。ぐい、と突然後ろ手を引かれ、中腰のまま尻餅をついた。


「いったぁ…!何ですか、突然っ」
「千花、ならば御教授願おうか。貴様が言う、恋とやらが如何なる物か」
「っ、は…!?」


そして掴まれた腕をそのままぐい、と引き上げられ。咄嗟のことでよろめいた私は、すっぽりと信長様の腕の中に収まった。


「な、な、何っ…!?」
「秀吉、今日の政務は貴様に任せた」
「信長様!?」


にやり、と笑い私の身を起こすと、そのままがっちり繋がれた手を解く暇も与えてくれず、ずんずん歩き出す信長様。着いていくのが精一杯の中、首だけで振り返ると、困りきった秀吉さんと、呆気に取られた皆の表情が見えた。



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