第3章 縁側と団子と幸せと(薬師視点・幸村・佐助)
「先ほどは、ありがとう」
「なにがですか?」
「佐助と共に、のんびり団子を食すことができるとは…夢にも思わなかった」
「佐助さんは、優秀な忍ですからね」
「うむ」
忍が姿を堂々と現して、主と同じ場で同じものを食べるだなんて、本来あってはならないことなんだろう。
私だって、他に人が居るときならばけっしてあのような真似はしたりしない。
でもせめて、誰もいないときくらいは、許されてもいいんじゃないかと…そう思ってしまうのですよ。
「幸村さん、どうぞ」
新しくお茶を淹れ直した湯飲みを、二人の間に静かに置く。
「ありがとう、夢姫どの」
「お団子、おいしかったですね」
「うむ、今まで食べた中で一番でござった」
「また、みんなで食べましょうね」
「そうだな」
きっと、またみんなで一緒に、おいしいお団子を食べましょう。
そよそよと、ゆるやかに吹く風を感じながら。
幸村さんと二人で他愛もない、けれど、とても幸せな話をのんびり語り合った。
「しょうゆも良いが、やはり某としては、みたらしを外すことはできぬ」
「私は、あんこのせも好きですよ」
とりあえず越後に戻ったら、謙信様と一緒にお団子を食べようと思います。
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普段は薬師どのと呼んでいますが、二人きりのときには名前呼びになる幸村。
一応、公私混同はいけないと気をつけていたら無意識下で癖になりました。
せっかく真面目な話の流れになったのに最後はお団子談義……でも、幸村は真剣。