第8章 酒は飲んでも呑まれるな(薬師視点・政宗・謙信・小十郎・かすが
実りの秋です。
新米がおいしい季節になりました。
珍しく謙信様ともども奥州へ招待されて、今宵はみんなで宴です。
「うわあ…この料理、すべて伊達様が作られたんですか?」
個人個人ではなく、少し広めな低い机の上に並べられた様々な魚料理に野菜料理たちが、これまた美しい皿にきれいに盛りつけられている。
料理が趣味だと聞いてはおりましたが、プロ並みじゃありませんか?これ。
というか、城主にこんなことさせちゃっていいのでしょうか。
「Yes!あんたたちの為に腕をふるったんだ、存分に楽しんでくれ。そっちの握り飯が、いつきに貰った新米だ。ぜひとも薬師さまにって頼まれたんでな、後日にでもなにか言ってやれば喜ぶんじゃねぇか?」
なんと、いつきちゃんたちが丹精込めて作ったお米!それは、美味しくいただかねばなりませんね。
今度、なにかお礼の品を届けるとしましょう。
「それはそれは、必ず後でお礼を伝えようと思います。謙信様、なにかお食べになりますか?」
今宵の宴は無礼講というやつで、こちらの部屋には伊達様、片倉様、謙信様、私。
それから影で控えているかすが嬢しかおりません。
なので、伊達様と謙信様が並んで座ったその両脇に、私と片倉様がそれぞれ座らせてもらっている状態です。
障子を一枚隔てた向こう側では、すでに他の武将の方々の賑やかな声が聞こえている。
「そうですね…では、なにか つまみに なりそうなものを ひとつ たのみます」
「わかりました。少しお待ちくださいね」
謙信様はお酒が好きだから、あまりお腹が膨れない、味の濃いツマミになりそうなものがいいですかね。