第36章 事故チューその後・参(薬師視点・政宗)
「よぉ。久しぶりだな、夢姫」
「これは……お久しぶりでございます、伊達様」
着物の上からでもわかる、引き締まった体躯。
長い廊下へ伸びている、長身から落ちた影。
不揃いに切られた、しかしさらりと風に揺れる髪。
「元気そうじゃねぇか。だがな、前にも言った筈だぜ?その堅苦しい呼び方はやめろ」
「申し訳ありません、つい癖で………政宗様、以前にも増して素敵になられましたね」
「Ha! なかなか言うようになったな、面白れぇ。アンタの方こそ、相変わらずキレイだ」
「ありがとうございます。政宗様にそんな風に言って頂けるなんて、お世辞でも嬉しいです」
「Ah-n? わざわざ下らない世辞を俺が言うと思うのか?わかったら、素直に受け取れよ」
鋭い中にも、普段は優しい光が灯っている左目。
眼帯で覆い隠された、強さと弱さを合わせ持つ右目。
端正な顔立ちは、最後に見たときよりもさらに色艶を増している。
以前お会いした時より、早くも一年が経ちまして。
全体的に、何と言うか……大人の色気がでてきたような気がします。
くふふ。目の保養、目の保養。
それにしても。
「政宗様がわざわざ甲斐へくるなんて、何かあったのですか?」
「たまには息抜きもいいだろ? それに、最近は体が鈍ってしかたなくてな……虎のおっさんに連絡とったら、真田のヤツもそうだと言っていたからな」
「つまり、遊びにきたワケですか…」
「おい、何だその呆れたような目は。だいたいアンタも、似たようなもんだろう」
「いえ、私は遊びにきたワケでは………ない、ですよ?」
「疑問系かよ」
「うぐ…」
いや、確かに仕事がメインではあるのだけれど。
幸村さんや佐助さんや信玄公と、お話したりお茶を飲んだりお菓子食べたり宴会したり…。
遊びにきてる、と言えなくもない…と言いますか………うぬぬ。