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【戦国BASARA】薬師シリーズ【その他MIX】

第6章 月より美酒より何よりも(薬師視点・謙信)



今夜は満月。

風流に月見酒です。


「どうぞ、謙信様」

「ああ、ありがとうございます」


白に混じる青が美しい盃に注がれたお酒を、クイッと軽く飲み干す謙信様。

夜空を仰いだ顔は月明かりでボウ…と輝いて見え、普段にもましてどこか浮世離れした雰囲気を醸し出している気がします。

なにかを憂うように細められた瞳には、まるで宝石みたいな月が映り込んでおり。

長いまつげに反射した光が、キラキラとこぼれては消えていく。

その様子があまりに儚く見えて、身も心も他のすべてを捧げてもいいから自分のもとへ縛りつけて離したくない…などと、思ってしまう。


「…謙信様」

「どうしました?とうとき ひかりよ」

「あの………いえ、なんでもありません」


いなくなったり、しませんよね?

そんなこと聞くべきじゃないし、聞いてどうなることでもない。

けれど。

周りが静かなこんな夜は、わけもなく不安に襲われる。


「まったく、そなたは ほんとうに…」

「えっ」


腕をつかまれ引き寄せられ、謙信様の身体に寄りかかるような体勢の中。

青く透きとおった瞳と目が合った。


「…いとしきひとよ………いっそ、うそを つむいでしまう この あかき くちびるを わたくしで ふさいでしまえば、すなおに こころを あずけて くれるのでしょうか」

「あ…の…」


頬に当てられた手から、じわじわと広がる熱。

唇をゆっくりなぞる白い指先が、私をとらえていく。


「ふふ。しんぱいせずとも、そなたに むりを しいるつもりは ありませんよ」

「…謙信、様」


ほんの少し、表情に哀しさを含ませた優しい微笑み。

ああ…本当に大切に想っているのに。

私は、この方を悲しませてしまう。

違うのです。

そうではなく。

あなたに、心配をかけたくないだけなのです。

重荷になどなりたくはないのです、謙信様。

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