第3章 ―後輩ワカメ野郎―
キーンコーンカーンコーン
『完全下校時刻です。校内に残っている生徒は速やかに下校して下さい』
さてテニス部の部活も終わったし、取材という名のストーキングをするか。
「美琴ー!」
「あ、祥子」
下駄箱で声をかけられたのは新聞部員の下川祥子。
「テニス部の取材は終わったの?」
「それがね……まだ二人しか終わってないのよ……でも大スクープっていうほどの収穫はないわ」
「えぇ!?それってヤバいんじゃないですか!?」
「ヤバいってもんじゃないわよ。女子に人気のテニス部にどうしても赤っ恥をかかせてやらないと気が済まないのよ!」
「で?次は誰がターゲットなの?」
「切原赤也。私と帰り道一緒だし。残念ながらね」
「あぁ、二年の」
「あ、切原来た。じゃーねー祥子!」
祥子と別れた私は切原に気付かれないように然り気無く後ろをついていく。
「ふっふーん」
切原に特に変わった様子は見られない。強いていうなら鼻歌を口ずさんでいるだけだ。こっちとしては何か独り言を呟いて欲しいのだが……
あ、スキップしてる。一体何があったっていうんだ。
「…………」
すると急に切原がピタリと止まる。
ヤバい。気付かれたか?
私は咄嗟に路地裏の角に隠れた。そして再び足が動き出す。それに続いて私も歩を進めようとしたその時──
「何さっきからついてきてるんだよ」
「ぎゃあああ!!」
視界にはドアップの切原がそこにはいた。
なんでだ!なんでバレた!?私の忍びは完璧だったはず……!
「おい。聞いてるのか?」
「!いや、あの、私はですね……通りすがりの者で、」
「そんな見え見えの嘘誰が信じるんだよ。お前、ストーカー?」
ブチッ
切れた。
誰が?
私が。
「私がストーカーだって?誰が好き好んでアンタ達みたいなイケメンで自意識過剰のテニス部をストーカーするのよ!てか私の方が先輩なんだから敬語使いなさいよ!この……ワカメ野郎!」
「……ああ?ワカメ……野郎?」
「へ?」
私がその言葉を口にした瞬間、切原の両目が赤く充血した。
そういえば聞いた事がある。切原はワカメ野郎などと言われるとデビル化するとか。
あれ?私いけないことした?