第7章 ―老け顔副部長の威厳とは―
「……むら……幸村……!」
ん?なんか廊下が騒がしいな……
「おい、幸村!この前幸村が提出したレギュラー部員達の練習メニューなんだが……」
「なんだ真田か。練習メニューがどうかした?」
教室から顔を出すとそこにはテニス部の部長、幸村と副部長の真田がいた。
「あの練習メニューはちょっとやり過ぎなんじゃないか?ましてや午後の部活内で全てをこなすなんて……」
何やら部活のことで揉めているらしい。てかあの部員達に恐れられている真田が、綺麗で女みたいな幸村にたじたじになっている……。
やっぱり部長には逆らえないほどの何かがあるのだろうか?
うーん、これは調べてみる必要があるね。
「そうかな。我が王者立海に『出来ない』なんて言葉は存在しないと思うんだけど」
「いや、しかしだな……!ものには限度というものが!」
「俺達に限界なんてない。そうだろ?……それとも、副部長の真田が、部長の俺に命令するんだ?」
ゾクッ……。
あれ……今なんか悪寒が……。
周りにいた女子達は歓喜の声を上げていたが、私の目に映っていた幸村の笑顔は悪魔のような笑みにしか見えなかった。
その証拠に真田の顔には尋常じゃない汗がダラダラと垂れている。
「っ……!俺は命令じゃなくて意見をだな……っ」
「ふーん。へぇ?」
「っ……わか、った。このメニューで練習に臨もう……」
あ、真田が折れた。
あの真田までもが恐れ戦くほどの強敵、幸村精市……
これは絶対に勝てる気がしない。
「じゃあ俺はもう戻るよ。次は移動教室だからね。また部活で」
「あ、あぁ……」
そこで二人は別れた。未だに真田は、怯えなのか、それとも怒りでなのか、俯いて小刻みに震えている。まぁ、前者だと思うけど。
結論、部員達に恐れられている真田の唯一の苦手なものは、部長の幸村だった。
真田も苦労してんのね……。