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【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集

第12章 ファインダーの向こう側〜気付きの物語〜(及川 徹)


彼女との物語は、さっさと忘れてしまいたいダサい勘違いから始まって、そのままさっさと終わったかと思っていた。

「今日は何の写真撮ってんの?皐月さん。」

彼女の撮った写真を、文化祭中にたまたま迷い込んだ教室の展示で見かけるまでは…。

「及川先輩…。別に…なんて事ない写真ですよ。」

別に恋愛感情なんかじゃない。

「その皐月さんがなんて事ないっていう写真が好きな俺はどうしたらいいのかなぁ?」

皐月さんの写真に興味があるだけ。

何気ない風景を写した写真は、どれも俺の知らない場所のようで…それでいて、非常に懐かしくて…。
思わず泣いてしまいそうになったんだ。

「またリップサービスですか?」

でも、俺の気持ちはこの失礼な後輩には全く伝わらない。

ってか、興味もない後輩相手に何で及川さんがリップサービスなんてしないといけないんだよ。

「相変わらず…及川さんのイメージどうなってるのさ?俺は純粋な皐月さんの写真のファンなの。」

ぷーっと膨れながら伝えると、やっと鈍い後輩にも俺の気持ちが伝わったのか、頬を少し染めて照れたような反応をみせる。

「…ありがとうございます。」

まぁ…こういう所は…ちょっとは可愛いと思うけど…。

って、別に好きとか…そんなんじゃないから!

数週間、見かける度に皐月さんに声を掛けて聞き出した情報がいくつかある。

新聞部には先輩に頼まれて、好きに写真を撮らせてくれて、ページが余れば皐月さんの写真を載せてくれるという条件で所属している事。

将来の夢はプロのカメラマンになる事で、新聞の記事に載せる文章を書くのは苦手な事。

人物を撮るよりも、風景を撮る方が好きな事。

逆に人物を上手く撮るのが課題だと悩んでいる事。

一人っ子な事。

通学にはバスを使用している事。

甘い物が好きだけど、あんまりたくさん食べると気持ち悪くなっちゃう事。

って…何回も言うけど、俺が興味あるのは皐月さんの写真だから!
好きとか…そんなんじゃないから!
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