【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第9章 ファインダーの向こう側〜出会いの物語〜 (及川 徹)
それから、ふとした時に皐月さんの写真を思い出してしまう俺。
今、俺の見てる風景は、彼女のファインダーを通すと、どういう風に写るのだろうか。
考えても何の答えも出ないけど。
それでも、彼女と同じ風景が俺にも見えたら…と思ってしまう。
何だこれ?
これじゃまるで…
「俺が皐月さんを好きみたいじゃないか…。」
「あ?何か言ったか?グズ川。さっさと着替えないと練習始まんぞ!」
「何でもないよ、岩ちゃん。ってか、グズ川って言わないで。」
何を口走ってんだ。
ってか、そもそも皐月さんの事が好きなわけでもないし。
ちょっと…気になってるだけだし。
「及川さん、そう言えば今日配布の新聞部の記事に写真載ってたっすね!うちのクラスの女子達が騒いでました。」
既に着替え終わっている金田一が思い出した様子で口を開いた。
新聞部の…って、この前皐月さんが写真を撮りに来てたやつ!!
「金田一、その新聞って今持ってる?」
「え?ありますよ…。えっと…。」
鞄の中を探る金田一を横目で見ながら、岩ちゃんが呆れた声をあげる。
「だから、そんなのいいから、早く準備しろよ!しかもお前、新聞部の取材なんて興味ないっつってただろ?」
岩ちゃんのお小言の間に、金田一が鞄から見つけ出してきた少しぐしゃっとなった新聞を受け取り、ページをめくる。
バレー部の春高予選に向けた近況記事のページ。
新聞用に何枚も撮らせてあげた顔写真じゃなくて、1番って背番号だけしか写ってないコートの中の俺の写真が載っている。
躍動感溢れるその写真は、きっと部内での練習試合の時のものだろう。
こんなの…いつの間に撮ったんだよ。
そうか…君の目にはこんな風に写っているんだね。
本当に…ズルイね。
やっぱり写真だけは凄く好きだ。
「おい、及川!!いい加減にしろよ!」
岩ちゃんがついに右手を得意の握り拳にしながら近付いてくる。
「すぐ行くよ、岩ちゃん。なんか…凄くやる気出てきた。」
君の写真に写ってる俺が、ヤケにカッコよく見えたから…もっと、カッコいいところを見せたいなんて思ってしまってる。
別に皐月さんの事が好きな訳じゃないけど…。
これは恋愛とかそういう話じゃなくて、俺達のまだまだ始まりの…ほんの出会いの物語。
end.