【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第9章 ファインダーの向こう側〜出会いの物語〜 (及川 徹)
このお話はロードワークから戻って、体育館へ向かおうとする俺に、1人の女の子が声を掛けてきたところから始まる。
「及川先輩、写真お願いしてもいいですか?」
彼女は重そうなレンズの付いたカメラを顔の前に掲げていた。
「もちろんだよ。一緒に撮る?」
えっ、第一印象?
って言っても、写真を頼まれる事も別に珍しくないから…。
先輩って呼んでるって事は、1年生か…2年生…?
普通に可愛いけど、このカメラはオタクの…それではないだろうか?
とか、そんな事を思ってた。
まぁ、こんな大きなカメラ持ってくるなんて…よほど本気な及川さんファンなんだね。
なら、ファンサービスはしっかりしないと!
そう思って、彼女の肩に手を回して、ピースサインをする。
あっ、マッキーに「写真撮ってー」と声を掛けるのも忘れてない。
岩ちゃんに頼むと殴られるから。
きっと彼女は、超近距離の及川さんに、顔を真っ赤にして、マッキーにカメラを渡すだろう。
そんな彼女の様子を見届けるのもファンサービスの一環だろうと、視線を向ければ、予想外にバッチリと視線が重なった。
「あの…そう言うのは結構です。」
肩に回した手を丁寧に、手で退けてこちらを見つめてくる彼女の目には…呆れとか、残念さとか…、考えたくないけど軽蔑とか、そう言うものが浮かんでいた。
「プッ…及川ダセぇ。お前、腕章確認したのかよ。」
マッキーにそう促されて初めて彼女の左腕に通された腕章に目が行く。
「新聞部…。」
「はい。新聞部から来ました皐月 和奏です。今日は春高予選前の取材に伺いました。及川先輩のファンではないので、勘違いしないでいただけると…助かります。」
それが俺と彼女…皐月さんの出逢いだった。