【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第6章 彼女の自信〜帰り道で〜 (月島 蛍)
「なんで、そんなに難しい顔してんの?」
放課後の部活の途中で、そう声を掛けてきたのは菅原先輩だ。
「あっ…ごめんなさい。タオルですか?あっ、ドリンク?」
汗だくの先輩に慌ててタオルとボトルを差し出す。
「じゃあ、両方。ありがとう。」
先輩は私の手からひょいっとタオルとボトルを受け取ると、スポドリを素早く流し込んだ。
私…部活中なのにボーッとして…。
「すいません。」
「ん?何が?」
顔の汗も拭き終わり、さっぱりした先輩がこちらを向いた。
「いや…ドリンクとか…遅くて…。」
「あぁ、全く部活に集中出来てなかったもんな。何か悩み事?」
集中してなかった上に、先輩にバレてる!
まさか、自分が月島君の彼女に相応しいのか真剣に考えてました。なんて、言えるはずがない。
「あ…いえ…。」
「まぁ、大体わかるけど。月島の事だべ?」
菅原先輩の爽やかな笑顔の前に、何の言葉も出てこない。
何で…バレてるんだろう。
「まぁ、確かに月島と付き合うのとか、難しそうだよなぁ。彼女にデレてる月島とか想像出来ないし。んで?何かあった?意地悪過ぎるとか?」
「デレてる月島」と言う先輩の言葉に、一瞬両想いになった日の月島君の顔を思い出して、顔の温度が上がる。
「いえ!意地悪なんて…。確かに言ってる事は意地悪っぽく聞こえますが、いつも助けてくれるんです!どちらかと言うと…私がトロいせいで、月島君をイライラさせてしまっているのが原因と言うか…。」
私が月島君の彼女に相応しくないのが原因と言うか…。
そもそも、付き合ったのが間違いだったと言うか…。
いや、私が間違いだったと思っている訳ではなく、月島君はきっとそのように後悔しているだろうと言う意味で…。
「それ、何でイライラしてるのか、ちゃんと本人に確認した?月島はわかりにくいから…真っ向コミュニケーション!って、このアドバイス…試合中に影山にもしたなぁ。大丈夫、あんだけ仲の悪い月島と影山だってコミュニケーション取れたんだからさ。」
真っ向コミュニケーション…。
私の気持ちを伝えたら…もう月島君の彼女でいる自信がないと伝えたら…月島君はどんな顔をするだろうか?
肩の荷が下りたと、あの時みたいに満足げに微笑むだろうか。