【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第1章 ★バレンタインデー (月島 蛍)
10年以上はぐらかして来た気持ちだから、
今年こそは伝えたい。
10年分の気持ちを込めたバレンタインデー。
【バレンタインデー】
「ねぇ、まさかとは思うけど、いくら和奏がバカだからって、この靴箱に投げ込まれたチョコレートの中に君の本命が混ざってるって事はないよね?」
ドンっと小ぶりなビニール袋が目の前に置かれる。
中には5-6個の可愛いラッピング達が収まっている。
私にヤキモチでも妬かせたいのだろうか。
置いた本人である蛍はというと、いつも通り眉間にしわを寄せてこちらを見下ろしていた。
「僕が朝からずっと待ってるの…気付いてるよね?」
…もちろん、気付いている。
今日は2月14日、バレンタインデーだ。
学校中、そこかしこが浮かれた雰囲気になっているし、こういう行事には興味無さそうな蛍ですら、朝家に迎えに来た時から、何か言いたげだった。
「学校には持って来てないの。」
「は?嘘つかないでくれる?じゃあ、朝から大切そうに抱えてるその袋は何?」
蛍は気付いてないのだろうか…。
周りのクラスメイトたちがザワザワとこちらを見ている事を。
「ちょ…月島君がチョコくれってダダこねてるんだけど。」
「何それ!?私があげたい。」
女子達がそんな蛍を見て、異様な盛り上がりを見せている事を。
そこで、ふと気付く。
やっぱり、蛍は私にヤキモチを妬かせたいんだ。
「これは部活の皆に配る分だよ。あっ、蛍の分もあるよ?今渡す?」
私が蛍の作戦に気付いて、ワザとやり返しているのが、蛍にも伝わったのか、はーっとワザとらしくため息をつく。
「もういい。あっ、それも…いらないからあげる。」
蛍が持って来たビニール袋を私の机に残したまま去っていく。