【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第3章 プロポーズの前に (孤爪 研磨)
「そうだね。それもいいけど…今日は違うんだ。今日はオレの気持ちを皐月に伝えたくて来てもらった。」
ニコニコと笑っていた皐月の顔がゆっくりと真顔に戻っていく。
「オレ、皐月の事が好きだよ。高2で同じクラスになってから…ずっと。安心してよ。別に今更クロと皐月の関係をどうこうしようって言うんじゃないから。ただ、知ってて欲しかったんだ。」
驚いた顔をした皐月に、言わなきゃ良かったと早速後悔がわいてくる。
「孤爪君…私、全然気付かなくて…ごめん。でも、凄く嬉しい!ありがとう。」
にっこりと笑う皐月。
その嬉しいにも、ありがとうにも、将来に繋がる何かが含まれている訳じゃない事はわかってる。
でも…皐月のこの笑顔を見れただけで、伝えて良かったと思う。
「クロはさ…適当で鈍感だから、皐月がガッカリするような事がこの先もあると思う。でも、クロは絶対に皐月の事幸せにするから…それは幼馴染として保証する。」
オレの言葉を言葉を聞き終わってケラケラと笑いだした皐月が口を開く。
「鉄朗もね、同じような事言ってたよ。研磨は無気力に見えるけど、しっかり考えてるから彼女か嫁でも出来れば絶対に幸せにするって!」
…なんか…言うんじゃなかった。
顔が赤くなってるんじゃないかと、思わず俯く。
ブーッブーッ
皐月のポケットで携帯が鳴っている。
「あっ、鉄朗だ!」
「もう心配で堪らなくなったんじゃない?」
「あはは。無視してもっと心配させちゃおうか!」
満面のイタズラスマイルの皐月。
良かった…。
皐月にこの気持ちを伝える事が出来て…。
完全に自己満足だけど…。
充実感溢れる負け試合。
「出なよ。喧嘩とかされても、仲裁しないからね。」
はーい。と口を尖らせながら、通話ボタンを押す皐月を眺める。
きっと、これからも皐月はオレの中で特別な存在だろう。
初恋の人で幼馴染の恋人。
きっとこれからも近くで見守って行くんだろう。
君が幸せになる様子を。
「幸せに…してもらいなよ。」
電話越しにクロと笑顔で話す皐月には、きっと聞こえなかっただろうけど…誰よりも君の幸せを祈っているよ。
end.