【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第3章 プロポーズの前に (孤爪 研磨)
負け試合が怖くて長期戦なんて言葉で逃げていた。
今更、勝とうなんて思ってないけどさ…。
不戦敗でも…オレも挑んでいたことは伝えてもいいよね。
【プロポーズの前に】
「なぁ、研磨…。俺、和奏にプロポーズしようと思ってんだ。」
クロがハイボールの入ったグラスを片手に、静かにそう言った。
いくら幼馴染とは言っても、二十歳を越えた頃から、お互い時間が合わなくてすれ違いが多くなって来て、お互い仕事に就いてからは年に1-2度しか会えてない。
今日は半年ぶりだ。
特に大事な話があるとか…そういう形式ばった飲み会じゃなくて…普段通りの近況報告の中に、当たり前のように混ざり込んだプロポーズという言葉。
「そう。おめでとう。」
何だか、クロがヤケに大人びて見えて、思わず視線を外しながら言った。
「いや、まだプロポーズするってだけだから、めでたくも、何とも無いんだけど…。プロポーズの前に1日だけ和奏の事貸してやる。」
「え?何で?」
クロはいつもズルいんだ。
欲しいものは何でも手に入れて、なのに人に憎まれない。
「長期戦…にも程があんだろ。決着付けてもいいんじゃないか?ってか、決着付けといてもらわにゃ、俺が心配だわ。」
必要ないと言い返そうとして、クロと目が合う。
クロはいつもズルいんだ。
こっちの考えなんてお見通しなんだから。
「後悔しても知らないよ。」
「言うねぇ。」
くっくっくって笑いながら、グラスのお酒を飲むクロを横目に、負け試合の決意を固める。