第10章 リードブロックとゲスブロック
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今日の部活は散々だった。天童くんになんて話を切り出そうかとずっと考えていて目は涙でボヤけ、汗のフリをして何度も擦った。さすがにリカコにも怒られたけど休憩の時に心配して事情を聞いてくれた。
「…まあ、いつかは絶対こうなると思ってたよ。私は」
「リカコ…」
「そんな心配ばっかしなくても、天童なんかノリ軽い奴だし、きっと笑って許してくれるよ」
それは…そうだといいな、という私の願望でもある。天童くんはもちろん弱い部分を表面上には出さない。でも結構ナイーブな部分もあることを知ってる。
「はい!集合!」
キャプテンの掛け声で休憩が終わった。もう1セット、3対3の試合が終わったら今日は上がりだ。すぐに着替えて待ち合わせ場所に行かなければ。最後くらいは先に待っていたいから。
結果はなんとか勝つことが出来た。今日はずっとダメダメだったけど、最後は1セットだけだから集中して試合ができた。
「なつみー!今日は残る?トス上げてくれないー?」
チームメイトからお誘いがかかる…が、ごめんねと断ると、
「あっ!ごめん!天童くんと帰るんだよね!」
チームメイトがチラッと見た視線の先には天童くんがいた。体育館の入り口で2年生の先輩達と仲良さそうに話している。人懐っこい天童くんは女バレの皆にも人気だった。
「…天童くん」
「なつみちゃん、こっち早く終わったから迎えに来たよん」
いつも通りの笑顔で見つめてくれる。一緒に帰るのをやめようと言い出したのは私なのに、少しも怒らずに願いを聞いてくれた天童くん。
「待ってて。すぐに着替えてくるから」
「ゆっくりでいいからネ」
お願いだからもう優しい言葉をかけないでほしかった。私はこれからあなたに酷い言葉を言ってしまうから。何一つ落ち度のない天童くんを傷付けることをしてしまうから。
私には泣く資格なんてこれっぽっちも無いのに胸が張り裂けそうでジンジンと痛い。天童くんを思いっきり好きになれたら良かったのかな。そしたら幸せだったのかな。色々考えるけど、やっぱり私は牛島が好きで一緒にいたいと思ってしまうから。
「…ごめんね、天童くん」
まだ誰も来ていないロッカールームで私は涙をゴシゴシと拭いた。