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まだまだ青い白鳥たち

第8章 牛若、東京にて。


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「…高岡さん、ごめんね。俺探してたかな?」
「キャプテン…」


キャプテンの髪は水で濡らされたようで水滴がポタポタと落ちている。瞼は少し腫れていて、今の今まで泣いていたことは一目瞭然だった。


「…キャプテン、今日はとてもいいプレーでした。うちのミスはそんなに無かったし、」
「そうだね。完全な実力差だったね」


ニコッといつも通り笑っているキャプテンなのに、なんとなく無理しているように感じてしまう。


「…あー…俺カッコ悪ィよな。せっかく高岡さんと全国来れたのにね」
「え?」
「……これでもアピールしてたつもりなんだけど。まあ、牛島が目立つ奴だからなぁ」


…まさかキャプテンが私を想ってくれてたなんて気付きもしなくて。私は呆然と立ってキャプテンの苦笑いを見つめることしかできない。


「…俺さ。東京のバレー強い大学に進学決まってるんだ。高岡さんも二年後来てよ」
「人の進路勝手に決めないでください」
「…来てよ。待ってる。いい大学だから後悔させない」


…やっぱりどうあっても白鳥沢学園バレー部のキャプテンだ。負け試合の後だというのにこの強気な態度。女バレの皆じゃないけど、これはキャーキャー言いたくなる。女はこういうのに弱いって分かって言ってるでしょこの男。


「…私、そういうグイグイ来る人嫌いです」
「だから牛島好きなんだ?奥手っぽいもんな、あいつ」


甘い顔だけど中身は男前でシッカリしてるって思ってたキャプテン像がどんどん崩れていく…。この人こんな感じだったかしら…?


「…まあ考えといてよ。時間はいっぱいあるし。俺戻るね。探しにきてくれてありがと」


グイグイ来たかと思ったらアッサリ引いていく。本当に女心分かってる人だな。でも思ったより元気で安心した。キャプテンが一番落ち込んで見えたから―――――。


あ。


落ち込んでるに決まってるじゃない。一番練習頑張って、みんなをまとめてきた人がトイレに籠って泣いてたんだから。


「……私もまだまだね」


軽口言って安心させてくれたんだって気付かなかった。信頼できる先輩ってだけだったのに、今は少しキャプテンの後ろ姿を見るとドキドキしてしまうのは内緒。
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