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まだまだ青い白鳥たち

第8章 牛若、東京にて。


合宿のメニュー中に牛島くんが消えたことに気づいてから、私は体育館の外に出て周囲を探すことにした。牛島くんはレギュラーメンバーだ。メニューもレギュラー専用のものがあり、着実にこなしていかないと夕飯の時間がまた遅くなってしまう。


「あ、高岡さん。牛島探してくれてるの?」
「キャプテン…!」


もうずっとジャンプサーブを打ち続けているのに汗さえも爽やかなキャプテンに声を掛けられる。


「ごめんな、俺もこれ終わったら行くから」
「いえ、大丈夫です。ちゃんと私が連れてきますから」


…なんとなく勘で。あまり色んな人を巻き込まないほうがいい気がした。


牛島くんが緑川さんを巡って天童くんと少し距離をとっているのは気付いていた。天童くんも牛島くんを警戒するように緑川さんを大事にしているのも見ていてすぐ分かった。


誰がどう見ても三角関係。それでも牛島くんは何か行動を起こすような感じには見えなかったけど。


(やっぱり合宿効果は堅物にも効いちゃうってことね)


いつもと違う環境で寝泊まり。まして年頃の男女が集まるこの場所で。思いを寄せる女子が近くにいたならば、いくらバレーボール馬鹿な牛島くんでも何か思ってしまったのかもしれない。


私のこの予感は的中した。


体育館外の坂上に小さな用具倉庫がある。そこの少し先には大木があって、根元に座り込んでいる牛島くんの姿が見えた。


「…牛島くん、戻らないの?」


顔は俯いていて表情はハッキリ見えないが、落ち込んでいる感じかな…。


「早く戻ったほうがいいわよ。メニューもまだ残っているし…」
「…今は…戻れない」


なんとあの牛島若利が練習を拒否したのだ。これはもう只事ではない。


「あの、何かあった?たぶん緑川さんのことだと思うんだけど…」


恐る恐る聞いてみた。いや、マネージャーとしても聞くしかない。レギュラー入りを希望していた部員達を跳ね除けて彼は選ばれているのだ。こんな場所でサボッているわけにはいかない。
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