第6章 奪ってもいいか
渡り廊下に向かうにつれて、人とすれ違うこともなくなってきた。薄暗い外にある渡り廊下はなんだか少し不気味なくらい。
「あ、なつみちゃん」
いつも通りの笑顔で手を振ってくれる天童くん。―――だけど私は一瞬息を飲んだ。髪が―――風呂上りのせいか全部下されていて、僅かに水滴が落ちてきている。湿った髪が彼本来の雰囲気と相俟って壮絶な色気を放っている。
付き合いだしてからは毎日話したり一緒に帰ったりしているはずなのに、知らない男子と二人きりでいるような感覚に陥る。
「…呼んでくれてありがとう。会いたいって思ってたから」
素直な言葉が口からスルスルと出た。私は牛島には何も素直な気持ちを言えないのに、天童くん相手だと何でも言えてしまう。
「…そんな可愛いこと言わないでヨ。ただでさえエロい恰好してるのに」
「え、エロいかな、これ」
長めの前髪のせいで天童くんの目がどんな表情をしているのかあまり見えない。ふと夜の涼しい風が吹いて思わず背筋がゾクっとする。
「そんな恰好でここまで来たの?」
いつもより低い声とともに手のひらが頬に添えられて私は思わず身構えた。ずっとここで待っていたせいか彼の手のひらは少し冷たい。
「…なつみ、大勢男がいる場所でそんな恰好ダメ」
「…ん、嫌、だった?」
「かなりネ」
耳元で囁かれてゾクゾクしてしまう。いつもふざけている彼の真剣で低い声に体の中心が甘く疼くのを感じた。
「口開けて、なつみ」
「あ…」
彼の命令に従って口を開けたところで優しく舌が入ってくる。天童くんはいつだって私の中の牛島を薄めてくれる。こうやって何も考えられなくしてくれる。
頬に添えられていた手のひらは徐々に下に降りていき、胸の膨らみに触れる。軽く触れてまた下に降りていき、今度はタンクトップの裾から手が入れられる。タンクトップの下はブラジャーしか付けていないので、お腹に直接天童くんの手が触れてくすぐったい。
「あ、くすぐったい、覚…」
「そう?じゃあ気持ちよくするネ」
そのまま手は胸まで辿り着き、ブラジャーのカップの中に手が入ってきてヤワヤワと揉まれる。