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まだまだ青い白鳥たち

第4章 利害


男子バレー部の体育館に到着すると、入口に張られたネットの向こう側に牛島の姿が見えた。体育館内はガランとしており、みんなロードワークにでも出たのだろうか。牛島とは最近全然話していないこともあり、若干の気まずさがある…が、恐る恐る話しかける。


「…う、牛島」
「!!…緑川か。どうした」


ちょうど私に背を向ける形でサーブを打っていたから、突然現れた私に驚いたようだった。


「鷲匠先生からプリント預かったの。レギュラーの練習メニューみたい」
「…監督はしばらく女バレの練習に付くんだったな」


ありがとう、と牛島が私の手からプリントを受け取ろうとした……その時。


「牛島、怪我…」
「…」


左手の中指。テーピングはされているが少し腫れているように見える。


「大丈夫だ。痛みも少ない。高岡にテーピングもしてもらった。練習には支障ない」


マネージャーなんだからテーピングするのは当然だ。うちの女バレ部員にも高岡さんはよくテーピングしてくれている。それでも何故なんだろう。まるで私を突き放すような言い方にさえ聞こえてしまう。


「…緑川にテーピングを教わったと言っていた。自分はテニスのが染みついているからと」


牛島は何かを思い出したようにフッと笑う。


「少し長めにテープを使うのはお前の癖だったな。中等部の頃が懐かしい」


…高岡さんに見本を見せた時、確かにいつもの癖で長めにテープを使った気がする。高岡さんは真面目だからそんな部分まで完コピしたに違いない。


「も、もう笑わないでよ!無駄遣いするなってコーチに怒られたの思い出したんでしょ」
「ああ」


…なんだか恥ずかしくなってきた。よく考えたら私の失敗した姿なんて牛島にいっぱい見られまくっているのだ。まあ私だって牛島の失敗はいろいろ見てきてるけど。


「じゃあ私行くね!それ主将さんに渡しておいて。あ、それからレギュラーおめでとう。牛島なら絶対入ると思ってたけど。頑張ってね!」


早々にこの場を離れようと早口で用件を言い、私は体育館を後にしようとした――――はずなんだけど。


牛島が、


後ろから抱き締めてきた。
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