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まだまだ青い白鳥たち

第3章 流れていく


「…気持ちは分かるわ。私も、天才ってのに打ちのめされた人間だから」
「…え」
「でもね、言い訳しててもしょうがないの。私達みたいな凡人は練習して進んでいくしかないのよ。天才達の足を絶対に引っ張っちゃいけない」


全国で準優勝までしておいて凡人とは…?嫌味にしか聞こえないセリフだけど、高岡さんの表情はとっても辛そうな苦笑いだった。


「私はね、中学の時テニスをやってて。ダブルスだったんだけど、相方が超天才肌。いつも追いかけるだけで精一杯だった。それでも食らいついて全国大会決勝戦までいったんだけど対戦相手は本物のバケモノ。無理して試合してヒザ壊して。最悪でしょ」


それで。それで高校ではテニスをやってないのか。…牛島を追い掛けてテニスを辞めたなんて思っててごめんなさい。私は心の中で高岡さんに土下座した。


「…そんな時にね、牛島くんの試合を偶然見たの」


中学の思い出を苦々しく語っていた時の表情が消え、一気に女の子の顔になった。牛島に恋してる女の子の顔。


「天才だ…ってすぐに分かった。でもそれ以上にバレーボールに全てを懸けてるんだっていうのも伝わってきた。真っ直ぐで強くて純粋なプレー。憧れないわけがないわ」


高岡さんが言ってることは全部わかる。私だって中等部からずっと牛島を見てきたから。好きになったのは最近だけど、ずっと憧れてたし尊敬もしてた。自分がもし怪我をして、バレーができなくなった時、牛島のプレーを見たらどう思うのだろう。眩しくて眩しくてひたすら恋焦がれてしまうのではないだろうか。


「…本当は留学してヒザを治すつもりだったけど、親に無理言って白鳥沢を受験したわ。牛島くんが全国優勝する瞬間に立ち会いたくて。絶対に傍で見たいと思った」


…だからあんなにマネージャーになるために頑張っていたのか。鷲匠先生もこんな情熱をぶつけられたんじゃ断れなかったに違いない。


「緑川さん戻りましょ。全国優勝するくらいの女じゃなきゃ、牛島くんは譲れないわよ」


高岡さんがあまりにも優しい笑顔でそう言ってくれるから、私はポロポロと涙を溢した。こんな私を迎えに来てくれたのは高岡さんだけだ。周りのことをちゃんと見ている証拠だし、選手に対する心配りも素晴らしい。


…私は牛島への恋心を消そうと決意した。恋愛も部活も両方なんて私には最初から無理だったのだ。
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