第3章 流れていく
6月に入り、春服と夏服の生徒が混在してくる季節。私の指先の怪我も完治し、以前と変わらぬ練習をこなせるようになっていた。トスだけが唯一の武器だったので本当に怪我が治って良かった。
そんな中、インターハイ予選に出場する選手を決める選抜期間が始まった。白鳥沢はなにしろ選手層が男女ともに厚い。私も一先生ながら選抜メンバーに選ばれたくて全力で頑張るつもりだ。中等部時代は一度も全国に行けなかった。早く高等部の公式試合にも慣れて、全国へ絶対行きたい。
男子バレー部はというと…。相も変わらず牛島と女子マネージャーが一緒に行動しているのをよく見掛けた。その度にショックは受けていたけれど、それだけを気にしている場合でもないのでなるべく意識しないようにしていた。…そんなある日。
「…男女合同練習?」
「そ。なつみちゃんのトス打つの楽しみだなぁ。一緒のチームになれればの話だケド」
天童くんから妙な伝言を受けた。先日の私の怪我の一件もあったのに一体どういうことなのだろう。私の不思議そうな表情を見て天童くんはフッと笑いながら言葉を続ける。
「合同練習は一年だけでやるらしいヨ。2~3年生は本格的にメンバー選抜しなきゃいけないしね。ま、俺達も勿論レギュラー勝ち取るつもりだけどサ」
そう言った天童くんはやる気満々といった表情で、見ているこっちも刺激される。発案者は一年生の男子部員だそうだ。男子はパワーコントロールの練習になるし、女子はいわずもがな、強烈サーブやスパイクを受けることができる。男子にとっては少し物足りない練習となりそうだけど、とても楽しい企画だと思う。
「早速今日からやるらしいヨ。アップしたら実戦形式でどんどん試合やるってサ。負けたらもちろんペナルティーあり」
男子バレー部のほうでは既に詳細連絡がいっている様子だが、女子はたった今私が初めて聞いた状態だ。監督やコーチは承諾済みらしいけど、みんな大丈夫かな…。
「…わかった。とりあえずリーダーのリカコにも伝えて、一年メンバーには全員に伝えておくね。連絡係ありがとう、天童くん」
「どういたしまして、じゃあ後でねーん」