第2章 気付き
「なつみー!早く体育館行こ!今日うちら床掃除当番だよ!」
放課後、いつのまに着替えたのか既にジャージ姿のリカコが私の席まで迎えに来た。
「分かってるって。ちょっと待ってー」
私は慌てて教科書やらノートをカバンに突っ込んでいく。机横に掛けておいた部活バッグを手に取って、教室のドアに向かってリカコと一緒に小走りした。
女子バレー部の体育館は、男子バレー部の体育館を通り過ぎた先にある。ちょうど男バレ体育館に差し掛かったところ、水飲み場のところで牛島の後ろ姿が見える。そういえば学園新聞の件、聞かないといけないんだった。
「リカコ、先に行ってて。牛島にさっきの学園新聞のこと聞いてくる」
「オッケー!早くね!」
リカコに先に行くよう伝えると、私は水飲み場まで歩いていく。…あれ、牛島誰かと話し中かな?
「…牛じ、」
「……ははっ」
牛島と話していたのは、例の女子マネージャーで。他には誰もいないようだった。珍しく牛島が笑っている。「もー、牛島くんってば笑わないで下さい!」って、女子マネージャーはちょっと不機嫌なようだったけど。
…牛島って普段全然笑わないクセに、たまに笑うと笑顔が可愛いんだよなぁ。なんだか急に胸がチクンと痛くなった。二人はいい感じの身長差で、外から見るとカップルっぽい空気が流れている。可愛いマネージャーと期待の大エース。すごくお似合いじゃないか。あのマネージャーは牛島のこと好きなんだろうし。
『誤解をしないで欲しいんだ』
昨日牛島に言われた言葉をふと思い出す。ああ、あれはそういう意味だったのか。痛かった胸が少しだけ楽になっていく。
…もう、何も言い訳できないな。
私は、牛島のことが好きなんだ。