第2章 制服の羽根(月島)
「おはよー月島君だよね?」
ホームルームが終わり、彼女が僕へと声を掛ける。
改めて彼女を見る。
女子たちにやたらとチヤホヤされてる彼女は割と普通に、僕に話し掛けてきたわけで。
でも先ほどの光景が頭から離れない僕にとって彼女の存在はやや脅威だった。
「、、そうだけど」
「私天使って言いまーす。昨日なんだかんだ挨拶出来なくてごめんね?隣同士よっろしくね」
そう言えば、と思う。
昨日も席替えの直後にクラスの男子やら女子やらに囲まれてて、この席しんどい、とか思ったばかりだった。
今日の朝ほどではなかったけど、鬱陶しいと思っていたのは確かで。
「、、どうも」
当たり障りのない返事をして、天使が「ひまりちゃん~」と女子たちに呼ばれ、早速どこかに連れられようとしていた。
だから天使との会話はこれで終わりの筈だった。
彼女の取り巻きが僕に飛び火して話し掛けて来てもウザイし。
「ねえ月島君さ~」
「なに?」
「私のこと見てたでしょ?」
ギクリとした。
確かにそれは否定の出来ない事実で。
けして恋愛的なよこしまな何かのフィルターを掛けていたわけではないけど。
なんとか誤魔化そう。
「何それ。見てないよ別に」
そう言ったのと、女子たちから「ひまりちゃん早く~」とせき立てられたのは殆ど同時だった。
「呼ばれてるんだから、早く行ったら?」
心底どうでもいい風を装ってスマホを取りだし、変哲もない画面を操作する。
ベタな誤魔化し方すぎて逆に怪しいかとも思った。
「はいはーい、今行くよ~」
女子たちに返して、また僕の方へと。
「ハハ、じゃあ私の勘違いだわごめんね~」
ハハ、と笑っておいて目が笑っていないことにゾっとした自分がいた。
今朝の出来事といい、自分はオカルトっぽい何かに巻き込まれてるのか、と馬鹿げた考えに達して。
ちょっとしたら山口に天使さんと何を話していたのだのなんだの捲し立てられて、いよいよ脳内が天使だらけになってキャパオーバーになった僕は机に突っ伏した。
耳元でツッキー!?と騒ぐ山口はうるさいけれど、いつもみたいにとがめることもしんどい。