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12色のアイ

第4章 脱両片想い


きっと私の恋は叶わない。
でも、貴方を想う事を止めるのはできない。
ああ、神様。どうかこの恋が彼に知られませんように……。

「天くん。どうしたの?今日はなんだか嬉しそうだね」
「うん、ちょっとね」
そう言う天くんの表情はほんのり緩んでいる。
「もしかして、恋人関係とか?」
「…恋人ではないけど、大切な人って意味では似てるかな」
ズキン
「ふ、ふーん。そうなんだ…」
「それじゃ、ボクはもう行くよ。君も遅刻しないようにね」
ズキン
「う、うん!」
天くんに片想いして1年。
最近は天くんの事を好きになっていくたびに心が痛む。
……「大切な人」って誰だろう。
でも、そんなこと聞けないし告白もできない。
だって私達はアイドル。
スキャンダルは御法度だ。
「あーあ…寂しい……」
私はポツリとそう呟いてスタジオに向かった。

プルルルル
「もしもし。あ、天くん……」
『百合さん?悪いんだけど、今日は帰れそうにない』
「え…何かあったの?」
思わず声が曇ってしまう。
『ドラマの打ち上げに捕まって抜けそうにない。晩御飯は用意しなくていいよ』
「うん。分かった」
『それだけだから。切るよ』
「うん……」
プツン、と携帯から悲しい音がする。
「あーあ。せっかく用意したのに……」
机の上には2人分の晩御飯。
しかも、天くんの好物のオムライス。
「上手く作れたのに無駄になっちゃった……。捨てるのは勿体無いなぁ……」
私は天くんの分にラップをして冷蔵庫に入れた。
「明日の朝ごはんにでもしようかな……」
九条さんと理ちゃんは外国、天くんは打ち上げ。
家にいるのは私一人。
よくあることだからもう慣れてしまったけど、天くんを好きになってからは心が寒く感じた。
私は一人オムライスを食べ、お風呂に入り、肌のケアやストレッチをしてから寝室に向かった。
「……寝れない」
時刻は午前0時。
いくら今日は仕事が午後からだと言っても、もう寝ないといけない時間だ。
寝ようと思って目を瞑ると脳裏に天くんが浮かぶ。
その天くんがニコリと微笑むと、私の心臓がドクンと鳴った。
「はぁ…これは、まずい……」
…正直に言おう。天くんの笑顔を思い出してムラムラしてしまった。
「ふ……天くん……」
私は我慢できずに寝間着に手をかけた。
後々後悔するとも知らずに…。
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