• テキストサイズ

【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】

第2章 僕と貴方の唇は


ジュニア時代、GPFでユーリに完敗した礼之は、以来もう一度彼と戦う為にひたすら修練を重ねていた。
最初は逸る気持ちから、参戦可能な年齢になり次第自分よりひと足先にシニアに上がったユーリを追うつもりだったが、その年の全日本選手権で現役最後の試合に臨む当時の純からのアドバイスで、「他人を気にする前に、まずは自分の事をしっかりやる」と思い直した末、シニアに上がるのを1年待つ事にしたのだった。
(シニアの彼と対等な舞台で戦う為には、その前にジュニアの彼に勝たなければ)
そう考えた礼之は、ジュニア最後のシーズンの国際試合で、当時のユーリの記録を全て塗り替えて制覇、今自分が出来る範囲での万全の状態で今季のシニアデビューを迎えたのだった。
はじめは単純にユーリとの再戦だけを望んでいた。
しかし、段々とそれが1人のスケーターとして、そして人間としての彼の事も知りたくなり、同時に自分の事も彼に知って欲しいと思うようにもなったのだ。
(そして、今の僕の願いは…おそらく僕の頭や心よりも、この唇が知っている)
曲かけに合わせてまるでコケティッシュな女性の仕草で己の唇に触れる礼之の姿は、これまでのプロで見せてきた雄々しさとはまるで違うものの、普段どちらかといえばコンプレックスに感じている礼之自身の容姿と合わさって、絶妙な魅力を醸し出していた。
「…この子は、一度決めたらよっぽどの事がない限り絶対に折れへん。ユリオくん、色々覚悟しといた方がええかもな」
眠気を堪えつつ、純はリンクの礼之を視界に収めると、小さく呟いた。

午後のアイスダンスとペア競技の表彰式が終わると、会場は慌ただしくEXの準備が始まっていた。
「後でユリオもバンケにおいでよ。ユリオはファイナリストだし、俺の口添えがあれば大丈夫。あ、正装はある?ないなら俺が買ってやるよ?」
「おめーの世話になるくらいなら、自腹切って他所から借りる。つか、万が一に備えて一張羅は持って来てるっての」
「デコが何かやらかしそうになったら、僕が全力で止めるから安心し。でも、ユリオくんがバンケに来てくれるなら、礼之くんも喜ぶわ」
純の言葉に、ユーリは自分の鼓動が僅かに早まるのを覚えた。
/ 22ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp